東京のマンションを、長く住む視点で見極めるために。
設計に携わる者の目で、カタログには書かれていない大切なポイントを、
分かりやすくお伝えしていきます。
不動産経済研究所が4月20日に発表した2025年度(2025年4月〜2026年3月)の首都圏新築分譲マンション市場動向で、1戸当たり平均価格が9,383万円・前年度比+15.3%と過去最高を更新した。東京23区は1億3,784万円・+18.5%、東京23区以外は6,823万円・+12.5%、神奈川県は7,481万円・+13.6%、千葉県は6,828万円・+21.8%という大幅な伸び。23区を中心に、都心の新築価格は1年で2割近く跳ねた格好だ。
一方で発売戸数は2万1,659戸・前年度比-2.6%と4年連続で減少し、調査開始の1973年度以降で過去最少を更新した。2026年の供給見込みも約2万3,000戸と、過去50年で最低水準と予想されている。デベロッパー各社は売れ残りリスクを警戒して供給戸数を絞り込み、結果として「少量・高単価」に振り切った市場構造が一段と鮮明になっている。
注目すべきは、新築の価格上昇と中古市場の温度差だ。同じく4月発表のダイヤモンド不動産研究所データでは、東京中古マンションは城西エリアが急騰する一方、都心3区では売出と成約の乖離が約7,000万円まで拡大している。新築は「絞り込み高単価」、中古は「売出強気・成約鈍化」という分岐が同じ月に並んだことで、住み替え検討層には「いつどの市場で買うか」がここ数年で最も重要な判断軸になりつつある。
「新築の発売戸数が4年連続で減って過去最少という数字は、街にとっても結構大きな話なんですよね。売られている部屋の少なさは、結果的に『いま買える街・買えない街』のコントラストを強くしていきます。住む街を選ぶときは、価格そのものよりも、その街で長くごきげんに暮らせる雰囲気を優先したほうが、最終的な満足度が高いと思います。」
ダイヤモンド不動産研究所が公開した2026年4月の東京中古マンション価格推移レポートによれば、城西エリア(中野・杉並・世田谷・練馬など)の上昇率が都心5区を上回る展開となった。城東・城南も同様に都心5区を上回る伸びで、価格上昇の主役が「都心の中の都心」から「歩ける街並みが残る環状7号線内側」へとシフトしている。
一方の都心3区(千代田・中央・港)では、成約価格が1億3,000万円台を維持しているものの、売り出し価格との乖離が約7,000万円まで拡大。在庫件数は前年比+44.9%、成約件数は前年比-21.3%と、売り手が強気を維持する一方で買い手が引いた状況がデータに表れている。住まいサーフィン編集部のレポートでも「都心部で売り手と買い手のニーズに乖離が生じている」と指摘されている。
背景には、2026年4月適用の住宅ローン変動金利が大手行で1%台に乗ったことで、都心の高額物件ほど月々返済額の伸びが効いていることがある。検討層は「都心タワーから城西・城南の中規模・歩ける街」へと視線を移しており、街並みが落ち着いた区での新築・中古とも検討熱が上がっている。エリアごとの温度差は、今後数か月で住み替えの選び方そのものを書き換える可能性が高い。
「都心の数字より、城西の街並みのほうが上がっているという話は、住む人の感覚が街に戻ってきている兆しに感じます。中野や杉並、世田谷あたりは、駅前と路地と公園のスケール感が穏やかで、毎日の生活が淡々と整う街なんですよね。価格データを見るときは『どの街に住んだら自分の機嫌が安定するか』をセットで考えると、後悔の少ない判断になりやすいです。」
不動産協会が打ち出した転売規制の新指針が、主要デベロッパーで本格導入のフェーズに入った。骨子は「引渡しまでの売却活動禁止」「登録(申込)名義=契約・登記名義の原則」「購入戸数の上限」の3点。背景には国土交通省の調査で、都心部の新築マンションのうち短期売買が1割前後を占めているという実態があり、千代田区が3月に出した「原則5年転売禁止」の異例要請とも連動している。
2026年に入ってからは、住宅ローン変動金利の1%台突入や固定金利の3%超えで実需層の購買力が削られる一方、富裕層・投資層が新築タワーを「短期で売り抜ける投資先」として扱う構造が問題視されてきた。新指針は、申込時点で実需性を担保し、引渡前の転売や名義人差し替えを実質的に封じ込める仕組み。デベロッパー側も「契約後すぐ売り出される住戸」が街並みに与える違和感に向き合い始めている。
影響はマンション選びの実務にも及ぶ。同じ立地・同じグレードでも、転売規制が強い物件のほうが住人層が安定し、街と一緒に育っていきやすいと評価され始めており、検討層の関心軸が「資産価値の伸び」から「住人層と街の落ち着き」へと地味に動いている。投機目的の短期売買にブレーキがかかることで、結果としてエンドユーザーが住みやすい新築タワーが増える流れだ。
「転売の流動が止まると、住む人が腰を据えて街と関わるようになるんですよね。住人が落ち着いている街は、商店街もマンションのエントランスも、ふしぎと表情が穏やかになっていきます。新築を選ぶときに『住人が長く暮らしてくれそうな物件か』を判断軸にすると、街と暮らしの相性が整いやすいです。」
日鉄興和不動産(リビオ)が分譲する、東京都港区の地上34階・総戸数815戸の大規模免震タワーレジデンス。2026年5月竣工予定で、品川駅周辺の大規模再開発エリアに位置する。地上34階のスケールに対して住戸数を800戸超まで積み上げた構成は、近年の都心新築の中でも希少で、首都圏の供給戸数が4年連続で減少して過去最少を更新する流れの中、ひとつの象徴的なボリュームを持つ1棟だ。
品川エリアは、リニア中央新幹線の新駅、JR山手線・京浜東北線・東海道線・東海道新幹線・京急本線の結節点として、ここ数年で東京の南の玄関として位置づけが大きく変わりつつあるエリア。物件周辺は再開発で街区が更新されつつも、旧東海道側に古い商店街と寺社の名残りが残るレイヤーを持っており、「新しい品川と古い品川が層になっている」独特の街並みを楽しめる立地だ。
大規模タワーは住人層の幅と管理運営の質が長期の住み心地を左右する物件タイプだが、815戸という規模は共用施設・コミュニティ運営にスケールメリットが効きやすい。竣工後の街区がどう育っていくかは、品川という街そのものの今後を測る指標にもなる。羽田アクセス・横浜方面アクセスを毎日使う層、リニア開業を見据えた住み替え層には、街と一緒に動いていける1棟と言える。
「品川はここ数年で街の重心がぐっと変わってきていて、新旧の風景が同じ通りに同居している面白い場所なんですよね。815戸という規模感は、住人と一緒に小さな街がもう一つできあがるイメージで、暮らし方の幅も広く取れます。新幹線・京急・山手線の結節点で、家を起点にどこへでも気軽に動ける立地は、これからの暮らしのスタンダードに合っていると思います。」
三井不動産レジデンシャルが分譲する、東京都渋谷区笹塚のタワーレジデンス。京王電鉄京王線「笹塚」駅徒歩4分の駅近立地で、2026年5月中旬販売予定として予告広告が進行中。新宿駅まで京王線で4分というアクセスを持ちながら、笹塚側の街並みは商店街と路地が穏やかに残る、渋谷区の中でも肩肘の張らないレイヤーに位置している。
笹塚は渋谷区の西端、新宿区・中野区との結節点に位置するエリアで、京王線の準特急停車駅。「笹塚十号通り商店街」を中心に、深夜まで開く飲食店から落ち着いた喫茶までが揃い、夜のひとり歩きも穏やかにできる街並みが特徴だ。物件のある駅徒歩4分エリアは、玉川上水緑道・南台方面に続く低層住宅街と、京王線高架沿いの賑わいが並ぶ二層構造で、渋谷区アドレスでありながら住宅街の安心感をしっかり持つ立地と言える。
三井「パークタワー」シリーズは、駅前アクセスと住人層の落ち着きを両立した都心タワーで実績のあるブランド。2025年度首都圏新築マンション平均が9,383万円・前年度比+15.3%と過熱が続く中、新宿圏でありながら渋谷区アドレスを取れるこの立地は、住み替え検討層・共働きパワーカップル層に刺さるポジションだ。発売戸数が過去最少を更新する2026年市場で、駅徒歩一桁の駅近タワーという希少カテゴリーに入る1棟と言える。
「笹塚は新宿のすぐ隣にありながら、街の体温が一段下がる落ち着きを残しているのが好きなんですよね。商店街でごはんを買って帰って、玉川上水沿いをぼんやり歩く、そういう日常が選べる街です。渋谷区アドレスでありながら肩肘張らない暮らしができるのは、長く住む前提で考えると地味に効いてくる強みだと思います。」
三井不動産レジデンシャルが分譲する、東京都港区南青山6丁目のタワーレジデンス。東京メトロ千代田線・銀座線・半蔵門線「表参道」駅徒歩8〜9分の立地で、地上21階地下2階建・全85邸のミドルスケール。2026年9月完成予定として販売・モデルルーム公開が継続している。マンションマニアの予定価格レポートによれば、邸宅型タワーとして上位グレードに振り切った価格レンジが提示されている。
南青山6丁目は、表参道交差点と西麻布交差点を結ぶ「青山霊園〜高樹町」の高台に位置し、骨董通り・根津美術館・岡本太郎記念館に近い、青山アドレスの中でも一段静かなレイヤー。低層住宅地区域の規制が厳しく、商業地の派手さから一歩離れた「都心の中の緑と邸宅」の風景を維持しているエリアだ。21階建・85邸という抑えたスケールも、街並みのコンテクストに合わせた選択と言える。
三井「パークコート」シリーズの中でも上位ラインに位置し、住戸プランは住み替え富裕層・コレクションを持つアートラバー層を意識した設計。2025年度首都圏新築の平均が9,383万円の市場で、青山高樹町アドレスは別格のレイヤーに入るが、街並みと建物のスケール感が破綻しないことを優先した1棟として、長期的な街と物件の関係性が成立しやすいポジションだ。
「南青山6丁目は、青山の喧騒を抜けたあとに静寂が深くなる不思議な高台で、街の表情が一段変わるエリアなんですよね。低層中心の風景の中に控えめに佇むタワーは、街並みに迷惑をかけない暮らし方を選びたい人に向きます。骨董通りや根津美術館へぶらりと出かける休日が日常になる立地で、そういう街の余白を楽しめる人にこそ刺さる物件だと思います。」
三井不動産レジデンシャルが分譲する、埼玉県川口市本町のタワーレジデンス。JR京浜東北線「川口」駅徒歩6分の立地で、地上28階・全225邸の制震構造タワー。2026年は第2期の販売が進行中で、価格帯は1LDK〜4LDK(平均約65.46㎡)で約6,300万円〜1億4,100万円と公表されており、2026年5月中旬の販売タイミングが直近の節目になっている。
川口駅エリアは、上野東京ラインの開業以降、東京駅・品川駅・横浜駅への直通アクセスが整い、首都圏北部の住み替え先として位置づけが大きく変わってきた街。物件のある本町地区は川口駅東口の再開発が継続中で、駅前のリリアパーク・キュポラと住宅街が連なる、ターミナル駅でありながら歩いて回れるスケール感が残るエリアだ。23区アドレスを諦めずに広めの住戸を選びたい層からの支持が厚い。
2025年度首都圏新築マンション平均価格が9,383万円・前年度比+15.3%という上昇局面で、東京23区を一歩外して「同じ通勤動線で広い住戸を確保する」動きが住み替え検討層に広がっている。225邸という中規模スケールに、川口駅前再開発の街並み更新を組み合わせた本物件は、その流れに合致する選択肢だ。住人層と街の落ち着きを重視する2026年の市場ムードにも合いやすい。
「川口は『東京駅まで一本』の利便性をシンプルに享受できる街で、再開発と古い商店街が同じ駅前に並んでいる温度感がすごく好きなんですよね。23区の価格に背伸びをするより、家族で広めの間取りを選んで街を歩いて楽しむほうが、長く住んだときの満足度は高いと感じます。リリアパーク周辺の街並みは、都心アドレスとは違う種類の心地よさを返してくれます。」
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はじめまして、ryoと申します。一級建築士として、集合住宅・分譲マンションの設計に携わっています。
図面を描く仕事を通じて学んだのは、「住まいの良し悪しは、カタログやモデルルームの印象だけではわからない」ということ。構造・管理・立地、そして長く住むための見極め方——設計の現場から見えている景色を、できるだけ平易な言葉でお届けします。
上質なマンション選びのパートナーとして、このノートがお役に立てば幸いです。