東京のマンションを、長く住む視点で見極めるために。
設計に携わる者の目で、カタログには書かれていない大切なポイントを、
分かりやすくお伝えしていきます。
野村不動産ホールディングスが2026年8月27日に公表した「住宅売買に関する意識調査アンケート(第31回)」によると、今後の不動産価格について「上がると思う」と答えた人は33.8%で、前回調査から8.4ポイント減少した。代わりに増えたのは「横ばいで推移する」「下がると思う」で、市況の見通しが慎重な方向へ寄っている。調査は2026年7月8日〜23日に実施され、不動産情報サイト「ノムコム」の登録会員約21万人から1,041人が回答した。
対照的にはっきりした答えが出たのが金利だ。住宅ローン金利が今後「上がっていくと思う」と答えた人は90.1%に達し、選択肢のなかで突出した。売却側の温度感も高く、「売り時である」「どちらかと言えば売り時である」の合計は75.2%。値上がりを待つより、条件の良いうちに手放したいという判断が広がっていることが読み取れる。
もうひとつ目を引くのが、住まい探しにAIを「現在利用している」と答えた人が25.7%に達したことだ。用途は「相場や価格の妥当性の確認」「物件情報の収集・比較」が中心で、営業担当に聞く前に自分で相場観をつくる層が4人に1人まで増えた。価格が上がり続ける前提が崩れつつあるいま、買い手の情報収集の仕方そのものが変わりはじめている。
値上がりを期待して買う時代から、住む場所として納得できるかで選ぶ時代に戻りつつあると感じます。数字で迷ったときは、平日の夜にその街を歩いてみると答えが出やすいですよ。
住友不動産の「グランドシティタワー中野」が、2026年11月下旬の販売開始を予定している。所在地は東京都中野区中野4丁目で、JR中央線・東京メトロ東西線「中野」駅から徒歩9分。建物はRC造地上25階・地下1階建、高さ85.87m、総戸数510戸(非分譲住戸94戸ほかを含む)で、店舗2区画と子育て支援施設1区画を併設する。竣工は2029年4月下旬、引渡しは2030年2月下旬の予定だ。
住戸は1LDK〜3LDK、専有面積34.81〜87.00㎡と幅が広い。単身から家族まで受け止める構成で、駅前再開発に伴う大型供給としては標準的な組み立てといえる。敷地は中野駅の北西側一帯、南を都市計画道路補助221号線、北を明治大学中野キャンパスに挟まれた位置にある。中野駅周辺は北口側で複数の再開発が同時に動いており、この物件はその一角を占める。
首都圏では2026年7月の新築マンション平均価格が1億6,493万円と過去最高を更新するなど、供給の重心が高額帯に寄っている。そのなかで、34㎡台から87㎡までを1棟に収める計画は、価格帯の入口を残す設計判断ともいえる。510戸というまとまった供給が中野区の在庫にどう効くかは、来年以降の相場を見るうえでの手がかりになる。
中野は駅前が大きく変わる一方で、少し歩けば商店街や小さな飲食店の密度が高い街です。再開発の完成予想図より、実際に自分が毎日通る道の空気が合うかどうかで判断してほしいところですね。
旭化成ホームズのONDO-LABO(GREENOVATION推進室)が2026年8月26日に公表した調査によると、住まいの総合満足度で「大変満足」と答えた割合は戸建35.7%に対しマンション13.5%と、約2.6倍の開きがあった。自宅での幸福度でも「とても幸せ」は戸建36.2%・マンション19.8%と約2倍の差。調査は首都圏・関東圏に住む30〜79歳の既婚者442名(戸建235名/マンション207名)が対象だ。
差が大きく出たのは居室以外の空間だった。トイレで約3倍、洗面所で約2倍、書斎で約2.5倍、戸建のほうが満足度が高い。家のなかで長く過ごさない場所ほど、住まいの性能差が体感として表れるという構図だ。ただしこの調査は高い性能を備えた戸建を対象にしており、戸建一般とマンション一般の比較ではない点は押さえておきたい。
むしろ注目すべきは、両者が住まいに求めているものが最初から違うことだ。戸建の居住者は「夏涼しく冬温かい環境」「静かさ」を挙げ、マンションの居住者は「買い物の便利さ」「駅距離」「防犯性」を挙げた。つまりマンションを選んだ人は、家のなかの快適さより街のなかでの位置を優先している。満足度の数字だけを取り出して優劣を論じるのは、この前提を見落とすことになる。
この調査で面白いのは、マンションを選んだ人が「駅と買い物と安心」を先に挙げているところです。家の中だけで満足を測らない暮らし方なので、内見のときは部屋より先に周辺を一周してみるのが正解だと思いますよ。
「ジオ飯田橋」は、東京都新宿区新小川町に計画された全26戸の小規模レジデンスだ。東京メトロ有楽町線・都営大江戸線「飯田橋」駅から徒歩4分。建物はRC造地下1階地上7階建で、専有面積は43.94〜91.67㎡、間取りは1LDK〜3LDK。売主は阪急阪神不動産、施工は松井建設。販売開始は2026年11月中旬、竣工は2027年5月下旬を予定している。
26戸という規模は、都心の駅徒歩4分では珍しい部類に入る。同じ立地条件ならより多くの住戸を取る計画になりがちだが、この敷地規模でまとめた結果として、共用部が最小限で管理の見通しが立てやすい建物になっている。43㎡台から91㎡台まで幅を持たせているため、単身・二人暮らし・家族が同じ建物に混ざる住民構成になりそうだ。
新小川町は、飯田橋駅の北側、神田川と大久保通りに挟まれた一帯にある。飯田橋駅は5路線が乗り入れる結節点でありながら、駅から一本入るとオフィスと住宅が入り混じった静かな通りになる。神楽坂の飲食店街まで徒歩圏で、外堀通り沿いの桜並木や小石川後楽園も歩いていける。都心のど真ん中でありながら、生活の単位が小さくまとまっている土地柄だ。
新小川町は、飯田橋の乗り換えの便利さと神楽坂の路地の楽しさを両方使える場所です。26戸という規模なら住民の顔も見えますから、大規模の匿名性が苦手な人には合うと思いますよ。
「サンクレイドル青砥II」は、東京都葛飾区青戸7丁目に計画された全56戸のレジデンスだ。京成本線・京成押上線・成田スカイアクセス線が使える「青砥」駅から徒歩15分。RC造地上15階建で、専有面積は53.10〜60.50㎡、間取りは2LDK・3LDK。売主はアーネストワン、施工は彩建工。販売開始は2026年10月下旬、竣工は2028年3月中旬の予定だ。
住戸を53〜60㎡台に絞った構成は、価格を現実的な帯に収めるための組み立てだ。首都圏の新築平均が1億円を大きく超える局面で、二人暮らしから子ども一人までを想定した面積帯を、23区内で新築として供給する計画は数が限られている。56戸という規模も、共用施設を抱え込まずに管理費を抑えやすいサイズに収まっている。
青砥駅は京成本線と押上線が分岐する駅で、都営浅草線・京急線への直通に加え、成田スカイアクセス線で空港へも出られる。青戸7丁目は駅の北東側、中川に近い一帯で、戸建てと低層の集合住宅が並ぶ落ち着いた住宅地だ。徒歩15分という距離は決して近くはないが、そのぶん駅前の喧騒から離れ、川沿いの空の広さが日常にある。都心へ乗り換えなしで出られる城東らしい立地といえる。
青戸あたりは中川の土手が生活圏に入っていて、朝夕に犬を散歩させている人が本当に多い街です。駅まで15分の道のりをどう感じるかが分かれ目なので、一度実際に歩いて信号の数を数えてみてください。
「プレミスト鶴見花月総持寺ステーションフロント」は、神奈川県横浜市鶴見区岸谷4丁目に建つ全279戸の大規模レジデンスだ。京急本線「花月総持寺」駅から徒歩2分、JR鶴見線「国道」駅徒歩5分、JR京浜東北・根岸線「鶴見」駅も徒歩12分と3駅が使える。RC造地上14階建、専有面積は55.69〜90.78㎡。売主は大和ハウス工業・東京建物・三信住建。第2期7次の販売が2026年8月下旬に始まった。
この計画の特徴は、隣接する「鶴見花月園公園」(総敷地面積約4.5ha)と一体で進められた防災公園街区整備事業である点だ。神奈川県内で住宅一体開発と防災公園整備を組み合わせた例はここだけで、平常時は広い緑地、災害時は地域の防災拠点として機能する設計になっている。マンション単体ではなく、街区ごと計画された住宅地と考えたほうが実態に近い。
花月総持寺駅周辺はかつて花月園競輪場があった一帯で、その跡地が公園として整備された経緯を持つ。鶴見は京浜工業地帯の入口という印象が強い街だが、駅の西側は坂と高台の住宅地が広がり、総持寺の広大な境内が街の景観を落ち着かせている。横浜駅まで京急で約10分、川崎・品川方面へも出やすく、通勤圏として見た使い勝手は高い。
駅徒歩2分で目の前に4.5haの公園という組み合わせは、都心ではまず手に入りません。総持寺の参道や花月園公園を歩いて、この緑が自分の生活の一部になる感覚があるかを確かめるといいと思いますよ。
「ディアナコート大倉山」は、神奈川県横浜市港北区大倉山2丁目に計画された全25戸の低層レジデンスだ。東急東横線「大倉山」駅を最寄りとし、RC造地上5階建、延べ面積は約2,349㎡。専有面積は33.89〜85.27㎡で、駐車場は5台分。売主はモリモト。販売開始は2026年9月上旬、竣工は2028年3月末を予定している。
「ZEH-M oriented」と「低炭素建築物」のダブル認定を取得している点が計画上の特徴だ。ディアナコートはモリモトが都心の低層住宅地で展開してきた邸宅系のシリーズで、25戸という戸数は、共用部を絞り込んで住戸の質に配分する規模感といえる。33㎡台の住戸から85㎡台まで用意されており、単身の住み替えと家族世帯が同じ建物に並ぶ構成になる。
大倉山は、東横線で渋谷・横浜の双方に出られる位置にありながら、駅を離れると起伏のある住宅地が広がる街だ。駅前の商店街「エルム通り」はギリシャ風の街並みで統一され、丘の上の大倉山記念館と梅林が街のシンボルになっている。日吉・綱島と比べて開発の圧が強くないぶん、住宅地としての落ち着きが保たれてきたエリアでもある。
大倉山は坂の街なので、駅からの帰り道が上りか下りかで暮らしやすさが変わります。梅林から記念館へ抜ける道は本当に気持ちがいいので、休日の午前中に一度歩いてみてほしいですね。
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はじめまして、ryoと申します。一級建築士として、集合住宅・分譲マンションの設計に携わっています。
図面を描く仕事を通じて学んだのは、「住まいの良し悪しは、カタログやモデルルームの印象だけではわからない」ということ。構造・管理・立地、そして長く住むための見極め方——設計の現場から見えている景色を、できるだけ平易な言葉でお届けします。
上質なマンション選びのパートナーとして、このノートがお役に立てば幸いです。