東京のマンションを、長く住む視点で見極めるために。
設計に携わる者の目で、カタログには書かれていない大切なポイントを、
分かりやすくお伝えしていきます。
不動産経済研究所が発表した2026年5月の首都圏新築分譲マンション市場動向によると、平均価格は前年同月比13.5%上昇の1億660万円、㎡単価は156.3万円と、いずれも高値圏で推移した。発売戸数は1,447戸と前年比では増加したものの、歴史的な低水準が続いており、「量は絞り、価格は上げる」という近年の傾向がそのまま表れた内容となった。
とりわけ注目されるのが東京23区で、5月に発売された新築マンションのうち約63.5%が1億円以上のいわゆる「億ション」で占められ、過去最高圏の水準に達した。初月契約率は65.1%と業界の目安とされる70%を下回り、価格の高さが実需層の手を止めている実態がうかがえる。都心は「高すぎて動かない」、郊外は「値上がりで割安感が薄れる」という、市場全体の停滞感が数字に現れている。
この局面で大切なのは、平均価格という大きな数字に呑まれないことだ。同じ首都圏でも、エリアや駅からの距離、街の成熟度によって価格も暮らしやすさも大きく異なる。「23区で1億円」という平均に届かなくても、少し視野を広げれば、予算の範囲で納得のいく街と住まいは十分に見つかる——そんな冷静な目線が、2026年の住まい選びには欠かせない。
「平均1億円」という数字は、あくまで首都圏全体をならした目安にすぎません。実際の暮らしは、どの街のどの通り沿いに住むかで大きく変わります。数字に焦らされず、気になるエリアを歩いて自分の肌に合う街を見つけることが、遠回りに見えて一番の近道ですよ。
マンションを「買うときの価格」だけでなく「持ち続けるときのコスト」に注目が集まっている。スーモジャーナルによると、首都圏の維持管理費は上昇が続き、特に都心の新築マンションの修繕積立金は6年で約67.2%増と大きく伸びた。建設・工事費の高騰がそのまま維持コストに跳ね返っている形だ。
日本経済新聞の報道では、大規模修繕の費用が不足し、借入に頼るマンションが急増。関連融資は2025年度で約406億円と前年比58%増に達したという。こうした課題を受け、2026年4月に施行された改正マンション管理適正化法などでは、新築の分譲段階で事業者が管理計画をつくり管理組合に引き継ぐ仕組みが導入され、購入者が入居前から建物の維持の見通しを持ちやすくなった。
買い手にとっての教訓はシンプルだ。派手な共用施設やモデルルームの印象だけでなく、その建物を「どんな住民が、どんな空気感で管理していくのか」まで想像して選ぶこと。とりわけ中古では、掲示板や共用部の様子から、住む人たちが建物をどれだけ大切にしているかが見えてくる。長く安心して暮らせるかどうかは、そうした日常の積み重ねに支えられている。
内見のときは、部屋の中だけでなくエントランスや掲示板、ゴミ置き場もぜひ見てみてください。そこに住む人たちが建物をどれだけ大事にしているかは、意外と正直に表れます。気持ちよく管理されている物件は、住んでからの暮らしやすさもコミュニティの温かさも、長く続いていきますよ。
リノベーション大手リノベるのユーザー調査によると、住まいを探す実需層のうち8割超が中古マンションを第一候補に挙げ、中古への関心は新築の約2.2倍に達した。新築価格が手の届きにくい水準まで上がるなか、「家賃がもったいない」「コスパよく資産形成したい」という動機から、中古を買ってリノベーションする選択が若い世代を中心に広がっている。
後押しになっているのが、2026年4月に施行された区分所有法などの改正だ。老朽化したマンションの建替えや、建物を活かしたまま一棟丸ごと生まれ変わらせる「一棟リノベーション」について、住民の合意形成のハードルが引き下げられた。これにより、築年数の経った物件でも再生によって価値を保ちやすくなり、「古いから避ける」ではなく「再生して住む」という発想が現実的な選択肢になりつつある。
中古・リノベの魅力は、価格だけではない。すでに街として成熟したエリアの物件を選べること、周辺のコミュニティや暮らしの雰囲気を入居前に確かめられることは、新築にはない大きな安心材料だ。新築か中古かという二択にとらわれず、「どの街でどう暮らしたいか」を軸に候補を広げることが、2026年の賢い住まい選びの姿になってきている。
中古の良さは、街がすでに出来上がっていて、暮らしの雰囲気を自分の目で確かめてから選べることです。休日の商店街の賑わいや、公園で過ごす人たちの様子——そうした「その街の日常」が自分に合うかどうかは、実際に足を運ぶのが一番。新築にこだわらず視野を広げると、選択肢はぐっと豊かになりますよ。
MIRARTHホールディングス(タカラレーベン)と東京建物が神奈川県小田原市で分譲する「レーベン小田原 SKYS THE TOWER」は、小田原駅から徒歩5分に建つ地上19階建・全286邸のタワー型レジデンスだ。8区画の商業施設を組み込んだ複合開発で、スカイラウンジ・ゲストルーム・フィットネス・シアタールーム・コンシェルジュサービスなど共用施設も充実。ZEH-M Orientedと低炭素建築物の認定を取得している。2026年3月に販売を開始し、現在は先着順で販売が続く。
小田原は新幹線停車駅であり、東京・品川方面へのアクセスに優れながら、箱根・湯河原といった観光資源と海・城下町の落ち着いた暮らしが同居する街だ。都心の新築タワーが軒並み高額化するなか、新幹線通勤も視野に入れられる小田原の駅前タワーは、「都心一極集中とは違う選択肢」を求める層から関心を集めている。エリアの新築マンション市場では最大規模となる286邸という数字も、街のランドマークとしての存在感を示している。
注目すべきは、駅徒歩5分・商業一体という利便性と、相模湾・小田原城・箱根連山を望む景観が両立している点だ。大規模開発ならではの共用施設や2層吹き抜けのエントランスホールは、日々の暮らしに余裕を与えてくれる。新幹線で東京まで一本、休日には海も山も温泉も近い——「働く街」と「暮らす街」を無理なくつなげたい人にとって、現実的で魅力的な住まいの選択肢と言える。
小田原は、海と城下町の風情がありながら新幹線で都心にも出やすい、暮らしのバランスがとても良い街です。駅前にこれだけの規模のマンションが生まれると、街の顔そのものが変わっていきます。通勤の利便と休日の豊かさを同じ場所で叶えたい方には、じっくり見てほしいエリアですよ。
株式会社モリモトが大田区北馬込で分譲する「ディアナコート荏原町アトラス」は、地上7階建・全51邸の中規模レジデンスだ。2LDK〜3LDK(43.60㎡〜107.71㎡)と幅広い住戸構成で、三方が開けた角地・標高約30mの高台に位置し、全戸に平置駐車場を備える。2026年7月上旬の販売開始を予定しており、モリモトのディアナコートシリーズらしい落ち着いた住宅地の物件として注目される。
北馬込・荏原町エリアは、東急大井町線を軸に大井町・自由が丘・二子玉川方面へ出やすく、大田区のなかでも閑静な住宅地として知られる。都心3区の平均が1億円を超えるなか、城南の落ち着いた住宅街で7階建・51邸という「大きすぎない規模」の物件は、タワーとは異なる住まいの質を求める層から堅調な支持を得ている。高台という立地は、日当たりや水害リスクの面でも安心材料になりやすい。
注目すべきは、三方角地・高台・全戸平置駐車場という設計の落ち着きだ。角地の物件は採光・通風に恵まれやすく、平置駐車場は日々の車の出し入れの負担が小さい。51邸という規模は住民同士の顔が見えやすく、コミュニティが育ちやすいスケールでもある。派手さより「長く心地よく暮らせること」を重視する城南の実需層にとって、堅実で魅力的な選択肢だ。
北馬込のあたりは、大井町線ののんびりした空気と、坂のある閑静な住宅地の落ち着きが魅力です。51邸くらいの規模だと、住む人同士の距離感がちょうどよく、挨拶が自然に交わされるようなコミュニティが育ちやすい。派手さより暮らしの質を大切にしたい方に合う街ですよ。
積水ハウスが練馬区石神井町で分譲する「グランドメゾン THE 石神井公園」は、2棟構成・全33戸の低層レジデンスだ。専有面積は73㎡台から最大114㎡超と、ゆとりある住戸が中心で、全戸南向き。風致地区×第一種低層住居専用地域という緑豊かで良好な住環境が守られた立地に建ち、ZEH-M Orientedと長期優良住宅の認定取得を予定している。2026年10月上旬の販売開始に向け、事前案内が進む。
石神井公園駅は西武池袋線の急行停車駅で、池袋まで直通約11分というアクセスの良さを持ちながら、駅名の由来にもなった石神井公園の豊かな自然が生活圏にある。都心の高額化が続くなか、「みどりの近さ」と「都心アクセス」を両立できる城西エリアの人気は根強い。とりわけ低層・少戸数・大きめの住戸という組み合わせは、城西でも希少性が高い。
注目すべきは、都内では貴重な「邸宅型・低層」の住まいという点だ。第一種低層住居専用地域は高い建物が建ちにくく、将来にわたって空と緑の抜けが守られやすい。33戸という規模は共用部の運営が見通しやすく、ゆったりした住戸プランは長く住むほど価値を実感できる。石神井公園という成熟した街のブランドと相まって、腰を据えて暮らしたいファミリー層にふさわしい物件だ。
石神井公園は、大きな公園と水辺があって、休日に子どもと過ごすのにこれ以上ない環境です。低層で戸数の少ない住まいは、街並みにも溶け込みやすく、落ち着いた時間が流れます。池袋まで一本という便利さと、みどりの豊かさを両取りできる——長く根を張って暮らすのに向いた街ですよ。
「センチュリー川口芝エアビスタ」は、埼玉県川口市に計画されるRC造・地上13階建・総戸数72戸の板状レジデンスだ。JR京浜東北線「蕨」駅東口から徒歩7分という駅近立地で、京浜東北線一本で赤羽・上野・東京方面へダイレクトにアクセスできる。都心の新築価格が高騰するなか、実需のファミリー層が手を伸ばしやすい価格帯の駅近物件として関心を集めている。
川口・蕨エリアは、東京都心に隣接しながら価格が抑えめで、近年「こちくら郊外」の流れのなかで人気が高まっている。川口駅周辺は再開発や商業施設の充実が進み、子育て世代の流入も続く。京浜東北線・埼京線という都心直結の路線を使えるうえ、生活利便施設も揃っており、「都内まで通いやすく、暮らしのコストは抑えたい」という現実的なニーズに応えるエリアだ。
注目すべきは、駅徒歩7分・72戸という「大きすぎず小さすぎない」ちょうどよい規模感だ。駅近は日々の通勤・買い物・雨の日の負担を大きく減らし、資産の流動性という面でも安心材料になる。都心の同規模物件と比べれば価格を抑えつつ、通勤利便を確保できる——共働き世帯やこれから家族が増える層にとって、地に足のついた住まいの選択肢と言える。
蕨・川口のあたりは、都心にぐっと近いのに、価格も街の空気も肩肘張らない心地よさがあります。駅徒歩7分は、毎日の暮らしで効いてくる大きな強み。派手さはなくても、通いやすくて生活が回しやすい街は、住んでみると満足度が長く続きますよ。
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はじめまして、ryoと申します。一級建築士として、集合住宅・分譲マンションの設計に携わっています。
図面を描く仕事を通じて学んだのは、「住まいの良し悪しは、カタログやモデルルームの印象だけではわからない」ということ。構造・管理・立地、そして長く住むための見極め方——設計の現場から見えている景色を、できるだけ平易な言葉でお届けします。
上質なマンション選びのパートナーとして、このノートがお役に立てば幸いです。