東京のマンションを、長く住む視点で見極めるために。
設計に携わる者の目で、カタログには書かれていない大切なポイントを、
分かりやすくお伝えしていきます。
国土交通省が2026年8月31日に公表した建築着工統計によると、2026年7月の新設住宅着工戸数は6万6,439戸で、前年同月比+8.2%。4か月連続の増加となった。内訳は持家1万7,730戸(+0.4%)、貸家3万164戸(+10.0%)、分譲住宅1万8,208戸(+14.6%)。
注目すべきは分譲住宅の中身だ。分譲マンションは7,448戸で前年同月比+24.7%、3か月連続の増加となった。分譲一戸建ては1万578戸(+9.0%)で、マンションの伸びが際立つ。地域別に見ると首都圏のマンション着工は+31.4%と全国を上回った一方、中部圏は▲46.9%と大きく落ち込み、近畿圏は+13.8%。地域差はかなり大きい。
ここ数年、首都圏の新築供給は年間2万戸台まで縮み、「売る物件がない」状態が価格を押し上げてきた。着工が増えたからといってすぐ販売戸数に反映されるわけではなく、マンションは着工から竣工まで2〜3年かかる。ただ、2028年から2029年にかけて市場に出てくる物件の量は、いまの着工が決めている。数字が動き始めたこと自体は、買う側にとって悪い話ではない。
着工の数字は、2〜3年後にどれだけ選択肢があるかの予告編です。いま候補が少なくて焦っている方は、無理に決めずに待つという判断もあり得ます。住みたい街を先に絞っておくと、供給が増えたときに動きやすくなります。
JR東日本は2026年9月8日、東京都港区に若手クリエイター向けの複合施設「CREATIVE PLATFORM LINKSHINE 高輪ゲートウェイ」を開発すると発表した。都営浅草線・京急線「泉岳寺」駅から徒歩3分、JR「高輪ゲートウェイ」駅から徒歩7分。鉄筋コンクリート造地上9階建で、敷地面積は347.67㎡、延床面積は1,999.64㎡。開業は2027年3月を予定する。
構成は全34区画で、住宅13戸、アトリエオフィス8区画、スタジオオフィス13区画。住む場所と制作する場所を同じ建物の中に置く設計で、館内には「ブリッジコミュニケーター」と呼ばれるスタッフが常駐し、入居者どうしをつないだりワークショップを企画したりする。運営にはJR東日本文化創造財団が加わる。
高輪ゲートウェイ周辺は、大規模開発によってオフィスと商業と住宅がまとめて生まれつつあるエリアだ。そこに、まだ名前の知られていない作り手を意図的に呼び込む区画を差し込んだことになる。街ができあがったあとから文化を足すのは難しい。開発の初期段階でこの種の施設を組み込んだ点が、この計画のいちばんの特徴だ。
新しい街で最初の数年に誰が住むかは、その後の空気をかなり決めます。作り手が集まる場所が近くにあると、休日に開く小さな展示やイベントが増えて、街に出かける理由が増えていきます。
旭化成ホームズのマンション建替え研究所は2026年9月7日のメディア向け説明会で、改正マンション関連法が2026年4月に施行されて以降、同社が携わる建替え決議が13件に達したと明らかにした。これは過去10年の平均の約4倍にあたるペースだという。
背景にあるのは議決要件の緩和だ。すでに決議された5件のうち1件は、賛成した議決権の割合が77.0%だった。改正前の基準ではこの決議は成立していない。研究所長の重水丈人氏は「法改正によって決議を進めやすくなった」と指摘している。
もうひとつ大きいのが、選べる道が増えたことだ。従来は「建替え」か「敷地売却」の実質2択だったが、改正によって7種類の決議オプションに広がった。建物の状態も、住んでいる人の年齢も、区分所有者の事情もそれぞれ違う。ひとつの型に当てはめずに済むようになったことで、話し合いのテーブルに着ける管理組合が増えている。
築年数の古いマンションを検討するときは、住人の方々がこの先どうしたいかを話し合えているかどうかが、いちばん大事な情報です。総会の議事録を見せてもらえるなら、そこにその団地の空気が全部出ています。
「アトラス代々木」は、東京都渋谷区千駄ヶ谷五丁目に計画された全37邸(うち事業協力者住戸12戸)のレジデンスだ。JR山手線・中央総武線「代々木」駅から徒歩2分。都営大江戸線をはじめ、周辺で5駅11路線が使える。鉄筋コンクリート造地上9階建、敷地面積736.42㎡、延床面積2,323.58㎡。竣工は2028年4月下旬を予定する。
専有面積は44.55〜78.09㎡、間取りは1LDK〜3LDK。販売開始は2026年12月が予定されている。売主は旭化成不動産レジデンスで、都心の小規模高質レジデンスを手がけてきた「アトラス」シリーズの一棟にあたる。タワーではなく9階建に37邸をおさめる構成で、共用部を最小限に絞った設計が想定される。
千駄ヶ谷五丁目は、代々木駅の南側に広がる一帯だ。新宿の商業エリアまで歩ける距離にありながら、一本入ると事務所とマンションが混在する落ち着いた街並みになる。新宿御苑と明治神宮・代々木公園という大きな緑がどちらも徒歩圏という、都心では珍しい立地でもある。駅徒歩2分でこの規模の分譲が出ること自体が近年は少ない。
代々木は「新宿にも原宿にも歩ける」という立ち位置が、住んでみると一番効いてきます。平日の夜と休日の朝で街の表情が大きく変わるので、両方の時間帯に現地を歩いてみることをおすすめします。
「カーサソサエティ南阿佐ヶ谷」は、東京都杉並区阿佐谷南一丁目に計画された全11戸の分譲タウンハウスだ。東京メトロ丸ノ内線「南阿佐ケ谷」駅から徒歩3分、JR中央線「阿佐ケ谷」駅からも徒歩8分で、2駅2路線が生活圏に入る。地上3階建の低層で、竣工は2027年3月上旬、引き渡しは同年3月末日を予定する。売主はダイナセル。
専有面積は60.16〜83.66㎡、間取りは1LDK〜4LDK。11戸という規模は、マンションというより長屋型の集合住宅に近い。エントランスホールやラウンジといった共用部をほとんど持たないぶん、毎月の管理費が積み上がりにくく、住戸ごとの独立性が高い構成になる。中央線沿線の低層住宅地でこの形式が選ばれるのは、周辺の街並みと高さがそろうからでもある。
阿佐ケ谷は、駅の南北に長い商店街を持ち、個人商店がいまも数多く残る街だ。南阿佐ケ谷駅側には杉並区役所があり、公共施設が集まる。青梅街道から一本入れば戸建てと低層住宅が続き、駅前の賑わいと住宅地の静けさが数百メートルで切り替わる。日々の買い物を歩いて済ませたい層には、都内でも上位に入る環境だ。
阿佐ヶ谷は、商店街で顔を覚えてもらえるタイプの街です。11戸という規模なら住人同士の距離も近くなります。七夕まつりの時期に一度歩いてみると、この街が人をどう受け入れる場所なのかがよく分かります。
「アネシア南六郷」は、東京都大田区南六郷一丁目に建設中の全140戸の大規模レジデンスだ。京急本線「雑色」駅から徒歩12分、京急空港線「糀谷」駅から徒歩18分。鉄筋コンクリート造地上14階建、敷地面積は5,188.68㎡。竣工は2027年3月下旬を予定し、現在は先着順で販売中。売主はトヨタホーム、施工は長谷工コーポレーション。
専有面積は66.17〜110.19㎡、間取りは3LDKが中心で、価格は7,988万円〜1億1,608万円。特徴は、全戸が南向きの配置であることと、敷地の約7割を空地として緑に充てている点だ。駐車場は全台が平置きで、住戸に付属する専用ガレージを備えたタイプも用意される。マンションで車を日常的に使う世帯にとっては、機械式では得られない使い勝手になる。
南六郷は多摩川に近い平坦な一帯で、京急線で品川まで、空港線で羽田空港まで短時間で出られる。都心の同規模・同価格帯では70㎡を確保するのが難しくなっているなか、66〜110㎡という幅を140戸のスケールで供給できるのは、この立地だからこそだ。城南エリアで面積を優先したい層に、明確な選択肢を提示している。
多摩川の土手が徒歩圏にあるのは、暮らしてみると想像以上に大きい要素です。朝や夕方に土手を歩く人の顔ぶれを見ると、この街にどんな世代が住んでいるかが分かります。駅までの12分も一緒に歩いてみてください。
「グランドメゾン THE 石神井公園 COURT」は、東京都練馬区石神井町六丁目に計画された全33邸の低層レジデンスだ。2棟構成で、石神井公園を南に望む立地。西武池袋線「石神井公園」駅から徒歩11分。販売開始は2026年10月、竣工は2028年1月を予定する。売主は積水ハウス。
専有面積は73㎡超〜114㎡超で、100㎡超の住戸が14邸と全体の4割を超える。近年の首都圏の新築で100㎡超をこれだけまとめて用意する例は少ない。全戸が南東向きの配置で、「ZEH-M Oriented」の認証と「長期優良住宅」の認定をいずれも取得済みだ。
石神井公園は、駅前に再開発による商業施設が整いつつある一方で、南側には都立石神井公園の三宝寺池・石神井池という大きな水辺が広がる。池袋まで急行で約12分という距離にありながら、公園を中心とした住宅地の性格が長く保たれてきた街だ。33邸・低層・大型住戸という組み合わせは、そうした環境を前提にしないと成立しない企画といえる。
石神井公園は、公園そのものが住民の生活の中心になっている珍しい街です。朝と夕方に池のまわりを歩いている人の層を見ると、この街がどんな家族に選ばれてきたかがよく分かります。
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はじめまして、ryoと申します。一級建築士として、集合住宅・分譲マンションの設計に携わっています。
図面を描く仕事を通じて学んだのは、「住まいの良し悪しは、カタログやモデルルームの印象だけではわからない」ということ。構造・管理・立地、そして長く住むための見極め方——設計の現場から見えている景色を、できるだけ平易な言葉でお届けします。
上質なマンション選びのパートナーとして、このノートがお役に立てば幸いです。