東京のマンションを、長く住む視点で見極めるために。
設計に携わる者の目で、カタログには書かれていない大切なポイントを、
分かりやすくお伝えしていきます。
不動産経済研究所が7月22日に公表した「2026年上半期首都圏新築分譲マンション市場動向」によると、上半期(1〜6月)の平均価格は1億135万円と初めて1億円台に到達した。㎡単価は151.4万円。エリア別では東京23区が1億4,249万円(前年同期比+9.1%)、神奈川県8,346万円(+20.0%)、千葉県8,997万円(+56.8%)と全エリアが上昇した。千葉の急伸は、大型湾岸プロジェクトの高額住戸が価格平均を引き上げた影響が大きい。
一方で供給は絞られ続けている。上半期の発売戸数は7,989戸・前年同期比0.8%減と5年連続の減少となった。2026年通年では約2.2万戸の見通しで、過去50年で最少水準になる見込みだ。初月契約率は64.8%(前年同期比1.8ポイント低下)と需給の緩みも垣間見えるが、絶対数が少ないため選択肢そのものが増えるわけではない。在庫は6,389戸(363戸増)と積み上がっており、エリアによって売れ残りが出始めている。
「高い+少ない」の組み合わせが続くと、購入者側に起きるのは「探しても見つからない」という状況だ。特定の沿線・特定の間取りに絞ると、条件に合う新築が出るまで年単位で待つことになる。在庫が積み上がるエリアと、出ればすぐ動くエリアに分かれ始めており、一括りで「相場が下がる・上がる」と読むより、候補エリアの在庫の動きを個別に追う方が実情に合う。
価格の平均値は、実態を感じにくい数字になってきました。「1億円」という数字より、「自分が探している沿線で今いくつ出ているか」のほうが判断材料になりますよ。
東京都千代田区は2025年7月、不動産協会に対して新築マンションの販売条件として購入後5年以内の転売禁止と同一建物での同一名義の複数購入制限を設けるよう求める異例の文書を送った。背景にあるのは千代田区の住宅空洞化問題で、投資目的で購入しながら実際には住まない動きが目立ち、「所有者不在のまま動かない」物件が多発していた。区長は「打てる手を全て打っていく」と強調し、行政が民間の販売慣行に直接口を挟む異例の展開となった。
国土交通省が2025年11月に公表した調査によると、東京23区内の大規模新築マンションで購入後1年以内に売買された物件は2024年前半で575件。前年同期の約5倍ペースで急増しており、規制を求める声が高まった。不動産協会は2025年末に対策を正式発表。申込時から登記まで名義の同一性を契約書に明記し、引き渡し前の売却活動を禁止することをルール化した。三井不動産・三菱地所・住友不動産ら大手8社が対応を表明している。
転売規制が実効性を持つかは、引き続き検討段階にある。5年縛りは現状では法的強制力がなく、違約金設定という形に落ち着く物件が多い。それでも「転売規制あり」の物件では、住民が入れ替わりにくくなり、コミュニティの安定につながりやすい。物件の販売条件に転売制限の有無が明示されているかを確認することが、将来の住環境を見極める一つの視点になりつつある。
転売規制は、「買う人が住む」という当たり前を守るための仕掛けです。住民の顔ぶれが安定している街は、日常の挨拶や共用部の使われ方も違ってきます。販売条件の欄を一度確かめてみてください。
スーモジャーナルが特集した「住みたい街の新潮流」では、北区・板橋区が「東京ノース」として注目を集めている。山手線内側や東急・小田急沿線に比べ、同じ予算で広い住戸・広い公園・落ち着いた住宅街が手に入り、埼京線・南北線・三田線・東武東上線で都心への通勤も十分に賄える「コスパ3拍子」が評価されている。新宿・池袋から1〜2駅圏に入りながら、生活コストも住宅価格も抑えられる点が、子育て世帯と共働き世帯の両方から支持を得ている。
背景には再開発の進展がある。板橋区では上板橋駅南口の駅前再開発(商住複合タワー2街区・完成2027年以降順次)と板橋駅板橋口地区の大型開発(34階・388戸・2027年竣工予定)が動いており、低層階に商業・子育て施設・区民プラザを入れる計画だ。北区でも赤羽一丁目・赤羽台のUR大規模再開発(550戸超・2028年度完成予定)が進む。駅前の広場・商業施設が出来上がるにつれ、街の印象が変わるスピードは早い。
こうした街の特徴は、歩いてみないと分かりにくい。赤羽の商店街は昼間から人通りが多く、板橋区立美術館や荒川の河川敷など、休日を過ごす場所も意外に充実している。マンション選びで「エリアを広げてみる」際に、従来は候補に入らなかった北区・板橋区を一度歩いてみると、同じ予算で選べる間取りが一段広がることが多い。
北区・板橋は、歩くと発見が多い街です。商店街の空気や荒川・石神井川沿いの緑が意外に充実していて、歩いてから好きになる人が多いエリアです。同じ予算で広さが変わるかもしれない、という視点で一度歩いてみてください。
伊藤忠都市開発が荒川区荒川4丁目で分譲する「クレヴィア町屋レジデンス」は、東京メトロ千代田線「町屋」駅から徒歩8分に建つ地上9階・総戸数53戸の板状レジデンスだ。住戸は1LDK〜3LDK・55㎡〜109㎡の全19タイプと幅広く、最上階には109㎡のルーフバルコニー付き住戸も用意される。価格は第1期1次の予定価格として8,400万円台〜1億5,900万円台(100万円単位)。竣工は2027年9月下旬の予定で、施工は第一建設工業。
町屋は千代田線の急行停車駅で、大手町まで直通約16分、霞ケ関・表参道方面へも乗り換えなしで届く。都電荒川線「荒川七丁目」停留場も近く、王子・早稲田方面へのアクセスも確保されている。荒川区内では職人街の名残と商店街が共存するコンパクトな生活圏が特徴で、アリオ西新井や北千住の大型商業エリアも自転車・電車で気軽に出られる距離にある。
総戸数53戸というスケールは、共用施設の維持費が過大にならず、住民同士の顔が見えやすい規模だ。敷地は商業地域と準工業地域にまたがっており、建蔽率・容積率に余裕のある用途地域での計画となる。都心アクセスと生活感のある街並みを両立させたい層に向けた、コンパクトで使い勝手のよい一棟といえる。
町屋は、大手町まで案外近くて、街には生活感が残っているのが面白いところです。商店街を抜けた先に都電が走っていたりして、東京の重なり合いを感じる街ですよ。
阪急阪神不動産が世田谷区下馬6丁目で分譲する「ジオ学芸大学」は、東急東横線「学芸大学」駅から徒歩11分に建つ全74戸の低層レジデンスだ。住戸は1LDK〜3LDK・45.49㎡〜85.66㎡と幅広く、竣工は2028年1月中旬の予定。2026年7月に1期1次の登録受付・抽選を終え、現在は先着順受付中。低層建物ならではの落ち着いた外観と共用部が特徴となっている。
学芸大学は東急東横線の各停駅で、渋谷まで直通約12分、横浜方面にも乗り換えなしで向かえる。敷地の下馬は目黒川より南の閑静な住宅地で、スーパーやカフェが程よく混在する生活圏だ。中目黒・祐天寺といった賑わいのある街に近く、かつ住宅街の落ち着きも持っている。東京都の住宅事情では世田谷区の低層レジデンスは希少性が高く、供給量がそもそも少ない。
2026年の新築マンション供給が過去50年で最少水準に向かうなかで、世田谷区の低層レジデンスはとりわけ数が少ない。大規模開発が難しく、敷地もまとまって出てきにくいエリアのため、同じ条件の物件が次に供給されるまでには時間がかかる。現在の先着順は間取り・階数を選べる段階ではないが、エリアへの入口として検討価値が高い一棟だ。
学芸大学のエリアは、街を歩く人の雰囲気がゆったりしていて好きです。渋谷が近くてもどこか慌ただしくない。下馬の住宅街は、静かな路地と小さな公園が点在していて、歩いていて気持ちいい場所ですよ。
日鉄興和不動産が千葉県船橋市で分譲する「リビオシティ船橋北習志野ミッドレジデンス」は、東葉高速鉄道・東京メトロ東西線直通「北習志野」駅から徒歩4分に建つ3棟構成・全236邸の大規模レジデンスだ。習志野台三街区の住宅団地建替事業「LOCOCITY」の最終章として計画され、2026年5月下旬より販売を開始している。南向き中心の多彩なプランと、親子で共に過ごせるコミュニティスペースを備えた共用施設が特徴だ。
北習志野駅は東葉高速鉄道の急行停車駅で、東京メトロ東西線に直通するため大手町まで直通約40分、日本橋まで直通約37分の所要時間となる。始発・早朝の座席確保もしやすく、船橋市内でも通勤利便性が高い駅のひとつだ。駅周辺は習志野台の大型スーパー・保育施設などが充実しており、子育て世帯の生活インフラが整っている。
首都圏の新築マンション平均価格が1億円を超えた2026年、同エリアで3棟合計236邸という戸数が供給されることは希少だ。郊外の大規模開発では共用施設と植栽に余裕が生まれやすく、都心の小規模物件にはない「広がり感」が生活圏に出る。LOCOCITY全体の街開きが仕上がる段階であり、周辺環境も整備済みで歩いて確かめやすい。
北習志野は、団地の建替えを通じて街ごと更新されてきたエリアです。大規模の最終章というのは、全体の街並みが完成に近い状態で入れるということ。住み始めてから街が育っていくより、整った状態から入れるメリットがありますよ。
大和地所レジデンスが神奈川県相模原市中央区で分譲する「ヴェレーナシティ相模原」は、JR横浜線「相模原」駅の南口ロータリー横(徒歩1分)に建つ地上15階・全100邸のレジデンスだ。住戸は1LDK〜3LDK・42㎡超〜70㎡超と幅があり、価格は1LDK・2,980万円〜3LDK・4,298万円台(2026年4月時点)。全邸が南東または南西向きで、角住戸率は57%と高い。竣工は2027年11月の予定で、2026年4月上旬より販売を開始している。
相模原駅はJR横浜線の快速停車駅で、橋本・町田・東神奈川経由で横浜まで直通約40分。南口の駅前広場には商業施設・バス乗り場が集まり、生活の起点として使いやすい構成だ。相模原市は政令指定都市として医療・教育・行政施設が充実しており、長く住む街の基盤としての安定感がある。神奈川県内でも鉄道・道路のアクセスが多方向に分かれているため、職場に合わせて使う路線を選びやすい。
東京23区の新築3LDKが1億円前後になるなかで、4,000万円台で70㎡超の3LDKが、駅1分の新築で手に入るエリアは首都圏でも限られてきた。全100邸は中規模として管理コストのバランスが取りやすく、南東・南西向きの統一設計により採光の差が出にくい。郊外移住の入口として、または神奈川方面への転職を機にした住み替え先として、コスパの面での合理性が高い一棟だ。
相模原は、新宿・横浜どちらへも出られる利便性を持ちながら、生活のコストが穏やかな街です。駅のロータリー横という立地は、雨の日も傘いらずで帰れるのが地味に効きますよ。
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はじめまして、ryoと申します。一級建築士として、集合住宅・分譲マンションの設計に携わっています。
図面を描く仕事を通じて学んだのは、「住まいの良し悪しは、カタログやモデルルームの印象だけではわからない」ということ。構造・管理・立地、そして長く住むための見極め方——設計の現場から見えている景色を、できるだけ平易な言葉でお届けします。
上質なマンション選びのパートナーとして、このノートがお役に立てば幸いです。