東京のマンションを、長く住む視点で見極めるために。
設計に携わる者の目で、カタログには書かれていない大切なポイントを、
分かりやすくお伝えしていきます。
ダイヤモンド不動産研究所が2026年8月13日に公開した東京都中古マンション市場データによると、2026年7月の東京都全体の平均成約価格は7,004万円(前年同月比+2.2%、前月比+2.5%)と上昇が続いた一方、成約件数は1,863件(前年同月比▲13.9%、前月比▲12.8%)と大きく減少した。都心3区(千代田・中央・港)は成約価格1億3,095万円(前年比▲5.9%、前月比+3.6%)で前月比では2カ月連続の上昇、成約件数は228件(前年比▲18.6%)で7カ月連続の前年割れとなっている。
より鮮明なのが在庫の動きだ。都心3区の在庫は4,942件で前年同月比+50.5%(前月比+5.7%)と、都内6エリアの中で最も高い伸びを示した。売り出し価格と成約価格の差は7,113万円に開いており、売り手の希望価格と買い手が実際に払う価格のあいだのズレが数字としてはっきり表れている。「高い値段で売り出しても、そのままでは決まらない」局面が、都心の中古市場で1年近く続いている格好だ。
この状況は購入を検討する側にとっては悪い話ばかりではない。在庫が増えるということは、同じ街の中で比較できる住戸が増え、内見の予約も取りやすくなるということでもある。成約件数が減っている時期は、売主側も条件の相談に応じやすい。エリアによって在庫の増え方はまったく違うので、自分が検討している街の在庫と成約件数の推移を月次で追う習慣が、これまで以上に効いてくる。
在庫が増えている時期は、同じ街の中で複数の物件をゆっくり見比べられる時期でもあります。焦って決めずに、朝と夜で街の雰囲気がどう変わるかまで歩いて確かめておくと、後から効いてきますよ。
不動産経済研究所の集計によると、2026年上半期(1〜6月)の首都圏新築分譲マンション発売は7,989戸(前年同期比▲0.8%)で、上半期の1万戸割れは3年連続となった。上半期の平均価格は1億135万円(㎡単価151.4万円)、初月契約率は64.8%。これに対し下半期は約1.4万戸の供給が予定されており、2026年通年では約2.2万戸という見通しが示されている。供給の重心が明確に下半期へ寄る形だ。
下半期に偏る理由は、駅前再開発を伴う大型プロジェクトの第1期発売が秋に重なるためだ。上板橋・赤羽・武蔵小杉といった、駅前の商業や広場の整備とセットで進む計画が順次販売期に入る。2026年前半の首都圏は「発売戸数が少なく、同じエリアで比較できる物件がない」という声が続いていたが、秋以降は同じ街の中に複数の選択肢が並ぶ場面が増えることになる。
検討する側は、情報収集のタイミングを秋に合わせるのが合理的だ。モデルルームの来場枠は第1期発売の直前に埋まりやすく、気づいたときには先着順の受付が始まっている、ということも起こる。気になるエリアで「どの物件がいつ売り出されるか」を今のうちに一覧にしておくと、秋に落ち着いて比較検討ができる。
秋は同じ街で複数の物件が同時に動くので、比べながら選べる貴重な時期です。気になるエリアがあるなら、今のうちに「どの物件が秋に出そうか」だけでもメモしておくと動きやすいですよ。
マーキュリーが2026年7月29日に公表した調査によると、千葉県の中古マンション相場を2020年と2025年(9月まで)で駅別に比較した結果、上昇率トップは流山セントラルパーク駅の81.4%だった。以下、平和台(東武野田線)、豊四季、本八幡(都営新宿線)、西登戸などが70%超の上昇率で続いている。相場が2,000万円台だった駅が3,000万円以上へ移動する動きが、県内の広い範囲で起きた5年間だったことになる。
相場水準そのものも大きく変わった。2020年時点で上位30駅の構成は1,000万円台が3駅・2,000万円台が14駅・3,000万円台が10駅だったが、2025年には3,000万円台が事実上の最低ラインとなり、5,000〜6,000万円台に届く駅も現れた。新築時価格との関係も逆転しており、2020年には30駅中24駅が新築時価格を下回っていたのに対し、2025年には29駅が新築時価格を上回る水準に達している。
調査が指摘するもう一つの特徴が、船橋・市川・千葉・柏といったターミナル駅そのものより、その隣接駅の上昇率が高いという構図だ。ターミナルはもともと相場が高く伸びしろが限られる一方、隣駅は「大きな駅の買い物や飲食をそのまま使えて、住宅地としては静か」というポジションが評価されている。街を選ぶときに、第一候補のひと駅隣を候補に入れてみる——それが千葉県のこの5年から読み取れる実践的なヒントだ。
ターミナル駅の隣は、大きな駅の買い物や食事をそのまま使えて、家の周りは静か、という良いとこ取りができる場所です。候補の街を決めるとき、ひと駅ずらして歩いてみると新しい発見がありますよ。
東京都世田谷区松原1丁目に建つ「サンウッド世田谷明大前」は、京王線・京王井の頭線「明大前」駅から徒歩8分の地上3階建・全45戸の低層レジデンスだ。間取りは1LDK+S(46.93㎡)〜3LDK(70.29㎡)・2LDK(72.80〜73.50㎡)という構成で、価格は9,690万円〜1億4,890万円。2026年8月時点で第2期7次の先着順販売が進んでおり、諸手続き完了後の即入居に対応している。
明大前は京王線と井の頭線が交差する乗換駅で、新宿まで約5分、渋谷まで約7分、下北沢は井の頭線でひと駅という位置にある。ターミナルへの距離が近いにもかかわらず、松原1丁目一帯は戸建てと低層集合住宅が並ぶ落ち着いた住宅地で、街路樹のある細い道が続く。駅前の商店街に加え、和田堀給水所の緑や玉川上水緑道が徒歩圏にあり、日常の散歩コースに困らないエリアだ。
地上3階建・全45戸という規模は、23区内の新築ではめずらしくなった水準だ。低層で戸数が絞られた計画は、住人同士の距離感が近く、エントランス周りや共用部の使われ方が落ち着きやすい。新宿・渋谷どちらにも10分以内で出られる立地でありながら、家の周りは低層住宅地の静けさが保たれている——この両立が、この物件の一番の価値だと言える。
明大前は新宿にも渋谷にも10分かからないのに、駅を離れると急に静かになる街です。松原一丁目あたりは道幅が細く車の通りも少ないので、休日の夕方に一度歩いてみると雰囲気がよく分かりますよ。
明和地所が東京都練馬区中村北1丁目で分譲する「クリオ練馬ブライトマークス」は、西武池袋線「練馬」駅から徒歩9分に建つ地上11階建・全41戸のレジデンスだ。間取りは2LDK〜3LDK・46.14〜70.31㎡で、全戸が角住戸となるプランを採用している。入居開始は2028年4月下旬の予定で、2026年8月から情報公開・販売が進んでいる。
練馬駅は西武池袋線・西武豊島線・西武有楽町線・都営大江戸線の4路線が使える駅で、池袋まで直通約7分、大江戸線で新宿西口・六本木・大門方面へも乗り換えなしで動ける。中村北1丁目は駅の南側に広がる住宅地で、中村橋方面へ続く商店の並びと、区立の公園・小学校が近い落ち着いた区域だ。練馬区は子育て世帯向けの施策と保育の受け皿整備を継続しており、ファミリー層の定住率が高いエリアとして知られる。
全41戸という規模は、住人の顔ぶれが見えやすく、管理組合の話し合いが現実的に回るサイズだ。全戸を角住戸とする計画は、どの階のどの住戸を選んでも二面が外に開くということで、間取りごとの当たり外れが小さくなる。池袋7分・新宿方面へも直通という交通条件で、この規模の新築がまだ選べる点は、練馬という街の懐の深さを表している。
練馬は4路線が使えて、池袋も新宿方面も乗り換えなしで行ける便利な駅です。それでいて駅を少し離れると生活の店が並ぶ普通の住宅地で、毎日の暮らしやすさという意味ではとてもバランスの良い街ですよ。
一建設が埼玉県さいたま市浦和区仲町3丁目で分譲する「プレシス浦和仲町」は、JR「浦和」駅西口から徒歩12分(アトレ北口からは徒歩11分)に建つ地上10階建・全26戸(他に管理人室1戸)のレジデンスだ。間取りは2LDK〜3LDK・44.91〜87.89㎡で、約69%が角住戸という構成。ホテルのような内廊下設計とZEH-M認証を備え、2027年12月竣工・2028年1月入居予定で、2026年8月7日から情報公開が始まっている。
浦和駅はJR京浜東北線に加え、湘南新宿ライン・上野東京ライン(高崎線・宇都宮線)が停車し、上野・東京・新宿・渋谷方面へ乗り換えなしで出られる。仲町3丁目は駅の西側、旧中山道と県庁エリアに近い落ち着いた市街地で、浦和の中でも古くからの住宅地としての性格が強い。浦和は公立校の学区を軸に住み替える世帯が多く、教育環境を重視する層から長く支持されてきた街だ。図書館・美術館・県庁など公共施設が徒歩圏に集まる点も、日々の暮らしに効いてくる。
全26戸という小規模は、23区の同規模物件と比べると価格の入口が現実的で、駅から徒歩12分という距離も日常的に歩ける範囲に収まる。内廊下と角住戸中心の構成は、住戸ごとの条件差が小さいことを意味する。東京都内の新築が1億円を超える水準にあるなか、都心へ直通で出られて子育て環境の評価も高い浦和は、予算と暮らしの質を両立させたい層にとって検討候補に入りやすいエリアだ。
浦和は湘南新宿ラインで新宿・渋谷にも直通できて、街としては県庁所在地の落ち着きがあります。図書館や公園が歩いて行ける距離に揃っている街は、子どもがいる家庭には日常の満足度が高いですよ。
モリモトが神奈川県川崎市中原区丸子通1丁目で計画する「ピアース武蔵小杉レジデンス」は、東急東横線・東急目黒線「新丸子」駅から徒歩4分に建つレジデンスだ。間取りは1DK〜3LDK・25.38〜70.69㎡と幅の広い構成で、約74%が角住戸。竣工は2028年11月中旬の予定で、2026年8月19日に新規情報が公開されたばかりの物件だ。価格は現時点で未定となっている。
新丸子は武蔵小杉の隣駅で、東横線で渋谷まで約15分、目黒線で目黒・都心方面へも直通できる。武蔵小杉駅までは徒歩でも移動できる距離にあり、大型商業施設やJR各線(南武線・横須賀線・湘南新宿ライン)の利便を日常的に使える一方、新丸子側は昔からの商店街と低層の住宅が並ぶ落ち着いた街並みが残る。多摩川の河川敷が徒歩圏にあり、朝夕の散歩やランニングの場として使えるのもこのエリアならではだ。
武蔵小杉エリアは大規模タワーの供給が続いてきた街だが、この物件のように駅近で規模を抑えたレジデンスは選択肢としての性格が異なる。1DKから3LDKまで揃う住戸構成は、単身・夫婦・小さな子どものいる世帯までを想定したものだ。「武蔵小杉の便利さは使いたいが、暮らす場所は落ち着いていたい」という層にとって、新丸子という一駅ずれた立地は現実的な答えのひとつになる。
新丸子は武蔵小杉の賑わいを歩いて使えるのに、駅前は昔ながらの商店街の空気が残っている街です。多摩川の土手が近いので、休日の過ごし方まで含めて一度歩いて確かめてみてください。
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はじめまして、ryoと申します。一級建築士として、集合住宅・分譲マンションの設計に携わっています。
図面を描く仕事を通じて学んだのは、「住まいの良し悪しは、カタログやモデルルームの印象だけではわからない」ということ。構造・管理・立地、そして長く住むための見極め方——設計の現場から見えている景色を、できるだけ平易な言葉でお届けします。
上質なマンション選びのパートナーとして、このノートがお役に立てば幸いです。