東京のマンションを、長く住む視点で見極めるために。
設計に携わる者の目で、カタログには書かれていない大切なポイントを、
分かりやすくお伝えしていきます。
東京カンテイが2026年8月24日に公表した「三大都市圏・主要都市別 中古マンション70㎡価格月別推移」によると、2026年7月の首都圏の70㎡換算中古マンション価格は7,547万円(前月比+1.2%)で、24か月連続の上昇となった。県別では東京都1億1,301万円(+0.5%)、神奈川県4,368万円(+1.0%)、埼玉県3,284万円(+1.0%)、千葉県2,990万円(横ばい)。首都圏全体としては、なお上昇基調が途切れていない。
ただし中身をよく見ると、上昇のけん引役が入れ替わりつつある。東京23区は1億2,724万円で前月比−0.1%と、6月の−0.8%に続いて2か月連続のマイナス。東京カンテイは「都心部では流通戸数が増大し、隣接する行政区にも調整の動きが波及している」と分析している。6月時点では都心部で価格改定(値下げ)を行った売り出し物件のシェアが過半数を超えるところまで拡大していた。売り手の強気が、少しずつ現実の成約価格に近づいてきた形だ。
首都圏平均が上がり続けているのに23区が下がり始めている——この一見矛盾した数字は、需要が都心から周辺へ滲み出していることを示している。都心の価格が上限に達し、買い手が神奈川・埼玉へ探索範囲を広げれば、周辺県の相場が押し上げられて全体平均は上がる。数字の方向が地域ごとに割れ始めたときは、市場の重心が動いているサインと見ておきたい。
「首都圏が上がっている」と「自分の狙う街が上がっている」は、もう別の話になってきました。エリアごとに温度差が出てきた今は、平均値ではなく駅単位・街単位で相場を見るほうが正確です。
不動産経済研究所によると、2026年上半期(1〜6月)の首都圏新築分譲マンション発売戸数は7,989戸(前年同期比−0.8%)で、上期としては5年連続の減少となった。1戸あたりの平均価格は1億135万円と上期で初めて1億円の大台を突破し、㎡単価は151.4万円。前年同期比では平均価格が+13.1%、㎡単価が+12.1%の上昇だった。
供給が細る理由は需要不足ではなく、つくる側の事情にある。建設労働者の不足と資材費の高止まりで工期とコストが読みにくくなり、事業化のハードルが上がった。結果として2026年通年の首都圏供給見込みは約2万3,000戸と、過去50年で最も少ない水準になる見通しが示されている。うち都心部は8,000戸前後で、前年から約6%減と見込まれる。
注目したいのは、減る供給のなかで郊外の存在感が増していることだ。2026年は八王子・船橋といった郊外の大型物件が竣工を迎え、全体の戸数を下支えする構図になる。新築の選択肢が都心で細るほど、実需層の視線は中古と郊外へ向かう。「新築を都心で買う」以外の道筋が、これまで以上に現実的な選択肢として広がりつつある。
新築の数が減ると、街ごとの「選べる物件」の数も減ります。だからこそ気になる街があるなら、今出ている物件を早めに見に行っておくこと。次に同じ街で新築が出るのが5年後、ということも普通に起こる時代です。
リクルートが2026年9月に発表した「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 首都圏版」で、千葉県の「子育てしやすい街」1位に海浜幕張(千葉市美浜区)が入った。調査は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県に住む20歳以上の男女が対象。海浜幕張の評価項目を見ると、1位が「整備された美しい住宅街」、2位が「教育環境の充実」、6位に「公園の充実」が並ぶ。
この街の特徴は、住民自身が運営に関わる仕組みが根づいていることだ。一般社団法人幕張ベイパークエリアマネジメント(B-Pam)には住民の約7割が加入し、約100名の住民ボランティアがSNSやLINEで連携して活動を回している。新入居者を迎える「ウェルカムパーティー」ではドローンショーを実施し、夏の恒例イベント「ベイパーク・スプラッシュ」には延べ約2,000人の子どもが集まった。ペットイベントや料理教室といったサークル活動も住民主体で続く。
幕張新都心の日中活動人口は約23万人(2020年時点)。オフィス・大学・商業が集まる街に住宅街が加わったことで、平日と休日で表情が変わるエリアになった。行政やデベロッパーが用意した施設を使うだけでなく、住民が自ら企画して人を集める——この「街育て」の型が評価につながっている点が、他エリアにとっての示唆になる。
設備の良さは引っ越した初日から効きますが、住民同士のつながりは5年10年かけて効いてきます。見学のときに掲示板やイベントのチラシを眺めてみると、その街に住む人たちの温度が見えてきますよ。
「ルネグラン上石神井」は、東京都練馬区上石神井4丁目に建つ全106戸のレジデンスだ。西武新宿線「上石神井」駅から徒歩5分。建物はRC造地上4階建の3棟構成で、専有面積は58.28〜91.37㎡、間取りは1LDK+納戸〜4LDK。敷地は第一種低層住居専用地域にあたる。売主は総合地所で、分譲マンションの旗艦ブランド「ルネグラン」の首都圏第1弾という位置づけだ。2026年7月に竣工済みで、現在は先着順14戸(8,298万円〜1億3,298万円)を受付中、第2期10次が2026年9月上旬に販売開始予定となっている。
第一種低層住居専用地域は建てられる建物の高さと用途が厳しく制限される区域で、駅から徒歩5分の距離にこの規制がかかる立地は都区部では多くない。上石神井は西武新宿線の急行停車駅で、高田馬場まで乗り換えなし。駅前に商店街とスーパーが揃い、少し歩けば石神井公園方面の緑地帯が広がる。外環道の延伸工事に伴う駅周辺の再整備も進行中で、街の輪郭は今後数年で変わっていく見込みだ。
106戸を4階建て3棟に分けた配置は、1棟にまとめるより敷地に余白が生まれ、棟間に緑や通路を確保しやすい。ブランド第1弾として投入された物件だけに、1期25戸が即日完売するなど立ち上がりから反応は強かった。1LDK+納戸から4LDKまで幅を持たせた住戸構成は、単身・DINKS・ファミリー・シニアが同じ敷地に混ざる想定でつくられている。
駅から5分でこの静けさ、というのが上石神井のいちばんの持ち味です。急行停車駅なのに駅を離れると一気に住宅街の空気になるので、平日の夕方に駅から歩いてみると街のスケール感がつかめます。
「ディアナコート大倉山」は、神奈川県横浜市港北区大倉山2丁目に計画された全25戸の小規模レジデンスだ。東急東横線「大倉山」駅から徒歩4分。建物はRC造地上5階建、延べ床面積は約2,349㎡。専有面積は33.89〜85.27㎡、間取りは1LDK〜3LDK。売主はモリモトで、同社の邸宅ブランド「ディアナコート」シリーズにあたる。販売開始は2026年9月上旬予定(うち8戸は友の会会員住戸)、入居は2028年3月下旬を見込む。
設計上の特徴は内廊下設計・角住戸中心の住戸配置・平均8.8mのワイドスパンという3点で、一部住戸にはルーフバルコニーや専用テラスが付く。大倉山駅前から続く「エルム通り商店街」は約120店舗が並ぶ商店街で、坂を上がれば梅林で知られる大倉山公園と大倉山記念館がある。渋谷まで約28分、横浜まで約10分、新横浜まで約8分と、3方向へ短時間で出られる位置だ。
25戸という規模は、駅徒歩4分の立地としてはかなり小さい。エレベーターの待ち時間も、管理組合の総会も、大規模物件とはまったく違う運営になる。大倉山は東横線沿線のなかでも住宅地としての性格が強く、坂と緑と商店街が混ざる街並みが続いてきた。派手な再開発が起きにくいぶん、街の表情が長く保たれやすいエリアでもある。
大倉山はエルム通りを歩けば街の性格がだいたいわかります。個人商店が生き残っている商店街は、そこに住み続けている人が多い証拠。坂の上の公園まで登って、街を見下ろしてから決めるのがおすすめです。
「ウエリスサーパス中浦和」は、埼玉県さいたま市桜区西堀2丁目に計画された全95戸のレジデンスだ。JR埼京線「中浦和」駅から徒歩8分で、浦和駅からのバス便も使える。建物はRC造地上7階建、専有面積は66.67〜73.08㎡、間取りは3LDK中心。現在は先着順6戸を5,690万円〜7,490万円で販売中で、完成は2027年11月中旬予定。敷地内に53台の駐車場を備える。
中浦和駅は埼京線で大宮方面・新宿方面のどちらへも出られ、隣の武蔵浦和駅で武蔵野線に乗り換えれば東西方向にも動ける。浦和エリアは埼玉県内でも教育熱心な地域として知られ、公立小中学校の評価を理由に転入する世帯が多い。桜区西堀は荒川の広い河川敷が近く、別所沼公園や田島ケ原のサクラソウ自生地といった自然が徒歩・自転車圏にある。
首都圏の新築平均が1億円を超えたなかで、5,690万円から始まる3LDKは実需層が現実的に手を伸ばせる価格帯だ。駅徒歩8分・全95戸という組み合わせは、共用施設を絞って価格を抑えつつ、管理組合が機能する規模を保つ設計思想と読める。全戸3LDK中心という構成は、ファミリー世帯が中心のコミュニティになることを意味する。
浦和エリアは「学校で街を選ぶ」人が多いぶん、住民の年齢層や休日の風景が読みやすい街です。土曜の午前中に別所沼公園まで歩いてみると、どんな家族が住んでいるのかがよく見えます。
「クレアホームズ幕張本郷 ザ・テラス」は、千葉県千葉市花見川区幕張本郷3丁目に建つ全26戸の小規模レジデンスだ。JR総武線「幕張本郷」駅から徒歩11分で、京成線とバス便も利用できる。建物はRC造地上7階建、敷地面積は868.03㎡。専有面積は61.82〜90.31㎡、間取りは2LDK+S〜3LDK。2026年4月に竣工済みで、価格帯は4,900万円台〜8,900万円台(予定)、第1期6次が2026年9月上旬に販売開始予定となっている。
幕張本郷駅は総武線で東京駅まで乗り換えなし、幕張新都心へはバスで数分という位置にある。京成幕張本郷駅も併設され、成田・上野方面へのアクセスも確保されている。海浜幕張のオフィス街・商業施設・スタジアムが生活圏に入る一方、駅の南側は昔からの住宅地で落ち着いた空気が保たれている。今回のランキングで千葉県の子育て評価1位となった海浜幕張エリアと同じ生活圏にありながら、価格帯はひと回り抑えられている。
26戸で7階建てということは、1フロアあたり4戸前後の構成になる。同じ階の顔ぶれが自然に覚えられる規模感で、管理組合の運営も少人数で回る。竣工済みのため、実際の部屋の日当たり・眺め・共用部の雰囲気を確かめてから判断できるのも実務上のメリットだ。90㎡台の住戸まで用意されており、郊外ならではの広さを取りにいける選択肢になっている。
幕張本郷は「新都心の賑わいが徒歩圏にはないけれど、行こうと思えばすぐ行ける」という距離感が絶妙です。イベントの日は賑やかで、普段は静か。この落差を心地よいと感じるかどうかが判断の分かれ目になります。
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はじめまして、ryoと申します。一級建築士として、集合住宅・分譲マンションの設計に携わっています。
図面を描く仕事を通じて学んだのは、「住まいの良し悪しは、カタログやモデルルームの印象だけではわからない」ということ。構造・管理・立地、そして長く住むための見極め方——設計の現場から見えている景色を、できるだけ平易な言葉でお届けします。
上質なマンション選びのパートナーとして、このノートがお役に立てば幸いです。