東京のマンションを、長く住む視点で見極めるために。
設計に携わる者の目で、カタログには書かれていない大切なポイントを、
分かりやすくお伝えしていきます。
不動産経済研究所が2026年8月13日に公表した「首都圏マンション 戸当たり価格と専有面積の中央値の推移 2026年上半期」で、新築分譲マンションの戸当たり価格の中央値が8,040万円・前期比14.6%上昇したことが明らかになった。上げ幅は1,000万円超で、中央値としては7期連続の上昇となる。同じ期間の平均価格は1億135万円で、中央値と平均値の差は2,095万円。一部の超高額物件が平均を押し上げている構図は変わらないが、その平均に引っ張られない中央値までが8,000万円台に到達した点が今回の特徴だ。
エリア別の中央値は東京23区が1億2,153万円(前期比5.7%上昇)、東京都下6,770万円(同4.2%上昇)、神奈川県7,290万円(同10.5%上昇)、埼玉県5,918万円(同0.3%上昇)、千葉県6,868万円(同28.4%上昇)。伸び率が最も大きいのは千葉県で、人気エリアでの大型物件の供給が数字を押し上げた。一方で埼玉県は0.3%とほぼ横ばいで、同じ「首都圏の郊外」でも動き方がまったく違うことがはっきり出ている。専有面積の中央値は68.97㎡(1.0%拡大)、平均は66.93㎡(1.8%拡大)だった。
上昇の背景として挙げられているのは、施工費とマンション用地の高騰、そして事業者が立地を厳選する傾向だ。売れる場所にしか出さない方針が強まるほど、供給される物件の質と価格が上に寄り、中央値も一緒に上がっていく。裏を返せば、これからは「県」や「路線」でひとくくりに語れる場面が減り、駅ごと・街ごとに相場を見ないと判断を誤りやすくなる。千葉県の28.4%と埼玉県の0.3%という差は、その予兆と読める。
「千葉が上がって埼玉は横ばい」と聞くと不思議に感じるかもしれませんが、実際は県の話ではなく、どの街にどんな物件が出たかの話です。検討中のエリアは、県単位ではなく駅単位で数字を見てみてください。
不動産経済研究所の「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年上半期」によると、1〜6月の発売戸数は7,989戸・前年同期比0.8%減で、上半期としては5年連続の減少となった。上半期の1万戸割れは3年連続で、コロナ禍の2020年(7,489戸)以来の低水準だ。ただし下半期(7〜12月)の供給見込みは1万4,000戸・前年同期(1万3,909戸)比0.7%増とわずかながら上向きで、年間では約2.2万戸と2025年の2万1,962戸を0.2%上回る見通しになっている。減り続けてきた供給が、下げ止まりの気配を見せ始めた形だ。
注目したいのは、供給がどこに出ているかだ。上半期のエリア別内訳は東京23区2,684戸(シェア33.6%)、東京都下1,032戸(12.9%)、神奈川県2,132戸(26.7%)、埼玉県839戸(10.5%)、千葉県1,302戸(16.3%)。神奈川県が23区に迫る規模を占め、落ち込んだのは23区と埼玉県だった。売れ行きを示す初月契約率は全体で64.8%(1.8ポイント低下)だが、エリア別では23区63.9%(4.9ポイント低下)、東京都下52.7%、神奈川県66.6%、埼玉県59.2%に対し、千葉県だけが76.7%と4.0ポイント上昇している。販売在庫は6,389戸で前年同月末から363戸増えた。
下半期は東京23区と千葉県で大型案件の販売開始が控えており、23区では注目の大規模な定期借地権付き物件も予定されている。定借の供給は上半期だけで886戸(前年同期634戸)と大きく伸びており、年間2,000戸を超える可能性も指摘されている。このほか茨城県南部でも180戸の供給があり、5月にはつくば市で大規模物件の販売が始まった。「都心で買えないなら郊外」という消極的な選択ではなく、供給そのものが外側の街に移っているという見方が現実に近い。
神奈川と千葉の数字が示しているのは、街の元気さです。人が集まる場所には物件が出て、出た物件が売れる。郊外を検討するなら、駅前に人の流れがあるか、休日に歩いて楽しいかを見に行くのが一番早い判断材料になりますよ。
住宅金融支援機構がまとめた「2025年度 フラット35利用者調査」で、中古住宅での利用割合が35.9%となり、全融資区分のなかで最多になったことが分かった。2004年度に調査が始まって以来はじめてのことで、これまで中心だった注文住宅の比率は低下している。長期固定金利で借りる層のなかでも、「新築を建てる/買う」より「すでにある住まいを買う」が主流になったことを示す数字だ。
利用者の顔ぶれも変わってきている。平均年齢は43.3歳と前年の44.5歳から若返り、30代以下の比率が上昇。平均世帯年収は716万円で、前年の669万円から大きく伸びた。共働きで世帯年収を確保した30代が、金利上昇局面のなかで返済額を固定できる長期固定を選び、そのうえで中古を選ぶ——という流れが読み取れる。
金額の差も明確だ。新築マンションの所要資金は5,882万円で年収倍率7.5倍、土地付注文住宅は5,313万円・7.8倍。これに対し中古マンションは3,602万円・年収倍率は約5.0倍、中古一戸建ても5倍台で横ばいとなっている。面積で見るとマンション系は平均が若干広がり、一戸建て系は縮小傾向が続く。中古のほうが新築より広い傾向も変わっていない。年収の何倍まで借りるかという物差しで見たとき、中古は依然として無理のない範囲に収まりやすい。
年収倍率7.5倍と5.0倍の差は、毎月の生活の余裕に直結します。同じ街で新築と中古を並べて、浮いたぶんで何ができるかまで考えると、住まい選びの答えが変わってくることは珍しくないですよ。
三菱地所レジデンスが中野区東中野5丁目で分譲する「ザ・パークハウス 東中野プレイス」は、地上19階建・全72邸(募集対象外4戸含む)のレジデンスだ。住戸は2LDK・3LDK、56.63㎡〜68.38㎡で、全戸南東向き・角住戸率50%という構成になっている。建物は2026年2月にすでに竣工済みで、現物を見てから決められる完成販売。第2期2次は2026年8月下旬の販売開始予定で、本広告は8月中旬に公式サイトで出る段取りとなっている。入居可能時期は2026年12月上旬予定。
立地は2駅3路線が使える。JR中央・総武線「東中野」駅から徒歩8分、東京メトロ東西線「落合」駅は出口によって徒歩4分、都営大江戸線「東中野」駅は徒歩11分。総武線各駅停車で新宿まで1駅、東西線で大手町・日本橋方面へ直通できる二本立ての足を持つ。東中野は新宿の隣でありながら、駅前の商店街と神田川沿いの落ち着きが残る街で、春には川沿いの桜並木が知られている。
全72邸という規模は、都心近接エリアの新築としては小さめだ。共用施設を絞ったぶん管理の見通しが立てやすく、住人同士の顔が見えやすい規模でもある。すでに完成しているため、角住戸の光の入り方や周囲の建ち方、駅までの実際の歩き心地を、資料ではなく自分の足で確かめてから判断できる。新宿至近でこの戸数の完成物件は選択肢が限られるため、8月下旬の販売開始に向けて動きは早くなりそうだ。
東中野は、新宿の隣なのに空気がふっとゆるむ街です。神田川沿いを歩くと、都心に住んでいることを忘れるくらい静か。落合まで歩ける立地なので、休日の行動範囲が思ったより広く取れますよ。
阪急阪神不動産とJR西日本プロパティーズが世田谷区下馬6丁目で分譲する「ジオ学芸大学」は、東急東横線「学芸大学」駅から徒歩11分に建つ鉄筋コンクリート造・地下1階付地上3階建・全74邸の低層レジデンスだ。敷地は第一種低層住居専用地域と第二種住居地域にまたがる。第1期は16戸・2LDK〜3LDK(55.65〜80.62㎡)で1億390万円〜1億8,990万円と先着順受付中。第2期は2026年9月上旬の販売開始予定で、1LDK〜3LDK・45.49㎡〜85.66㎡と幅を広げてくる。竣工は2027年12月下旬予定、入居は2028年1月中旬予定だ。
学芸大学駅は東横線の各駅停車・急行が停まり、渋谷まで直通で約7分。駅前から続く商店街は、チェーン店と個人店が混じり合った独特の密度があり、「電車に乗らなくても一日過ごせる」タイプの街として長く支持されてきた。下馬エリアは駅から少し離れることで、その賑わいから一枚離れた住宅地の落ち着きに入る。低層住居専用地域の性質上、周囲に高い建物が建ちにくく、空の見え方が長く保たれるのもこの場所ならではだ。
1階には全74邸ぶんのトランクルームが用意され、間取りは全18タイプ50バリエーションと幅がある。3階建てという低さは、エレベーターに頼らず階段でも動ける日常のスケール感を生む。価格帯は1億円台が中心で、世田谷の低層住宅地という土地の希少性がそのまま表れている。第2期では45㎡台の1LDKも登場する予定で、単身・二人世帯にも間口が広がる。
学芸大学は、駅前の商店街の元気さと、少し歩いた先の静けさの落差が魅力です。下馬あたりまで来ると、暮らしの音がぐっと減る。渋谷まで7分の街でこの静かさが手に入るのは、なかなかありません。
ヤマイチエステートが埼玉県朝霞市本町2丁目で分譲する「ユニハイム朝霞本町」は、東武東上線の急行停車駅「朝霞」駅から徒歩5分に建つ鉄筋コンクリート造・地上12階建・全193邸のレジデンスだ。住戸は1LDK〜3LDK・35.67㎡〜70.31㎡で、全17タイプという幅の広い構成。第2期1次は2戸(3,298万円/5,298万円)で、登録受付が2026年8月15日〜9月5日、抽選は9月6日。あわせて第1期11次の9戸(4,188万〜7,578万円)が先着順で受付中だ。竣工は2026年12月下旬予定、引渡しは2027年2月中旬予定となっている。
朝霞駅は東武東上線の急行停車駅で、東京メトロ有楽町線・副都心線への直通運転を使えば池袋まで3駅17分。副都心線経由なら新宿三丁目・渋谷方面へも乗り換えなしで出られる。朝霞市は基地跡地の広い公園や、黒目川沿いの遊歩道など、水と緑の抜けが日常のなかにある街だ。駅の東西に商店街とスーパーが揃い、生活の用がひととおり駅の周辺で片づく規模感がある。
193邸という戸数は、市内の駅徒歩5分圏では過去最大級。ZEH-M Orientedの認証を取得し、「埼玉県分譲マンション環境性能表示」でも★★★★を得ている。35㎡台の1LDKから70㎡台の3LDKまでを1棟に収めた構成は、単身・二人世帯・子育て世帯が同じ建物に混ざることを意味し、住人の年齢層が偏りにくい。首都圏全体で郊外の駅近物件そのものが減っているなか、急行停車駅から徒歩5分でこの規模が出るのは貴重な機会といえる。
朝霞は、池袋まで17分という距離のわりに、川と公園の緑が近い街です。駅前で日常が完結して、休日は黒目川沿いを歩ける。都心から少し離れることで手に入る余裕が、はっきり形になっているエリアですよ。
京阪電鉄不動産・日鉄興和不動産・両備ホールディングスの3社が八王子市中町で分譲する「ザ・ファインタワー八王子」は、地上29階建・高さ約99m・総戸数346戸のタワーレジデンスだ。住戸は1LDK〜4LDK・40.05㎡〜90.51㎡を中心に、4LDKのプレミアムプランは150.42㎡まで用意される。価格は第1期4次で4,100万円台〜1億7,000万円台と、単身から大型住戸まで幅が非常に広い。竣工は2029年1月予定、入居は2029年3月予定となっている。
立地はJR中央線・横浜線・八高線「八王子」駅から徒歩4分、京王線の始発駅「京王八王子」駅から徒歩7分。中央線で新宿へ、京王線なら始発で座って都心へ向かえる二系統を持つ。敷地はかつての西武百貨店の跡地で、駅前の一等地が長く空いていた場所が住宅と商業の複合開発として動き出す形になる。八王子市で初めて総合設計制度を活用し、常緑樹と落葉樹を配した公開空地が整備される計画だ。
八王子は多摩地域最大の商業・大学集積地で、駅周辺だけで買い物・食事・通院がひととおり完結する。都心のタワーが1億円超からという水準になっているなか、4,100万円台から都心直結の駅前タワーに手が届くのはこのエリアならではだ。一方で竣工まで約2年半あり、その間に生活の前提が変わる可能性は織り込んでおきたい。駅前の跡地がどんな街区に生まれ変わるのか、複合開発の全体像を確認したうえで判断したい物件だ。
八王子の駅前は、多摩エリアの中心らしく人の流れが太い場所です。長く空いていた百貨店跡地が動くと、駅前の景色はかなり変わります。始発で座って都心へ出られる強みも、毎日のことなので効いてきますよ。
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はじめまして、ryoと申します。一級建築士として、集合住宅・分譲マンションの設計に携わっています。
図面を描く仕事を通じて学んだのは、「住まいの良し悪しは、カタログやモデルルームの印象だけではわからない」ということ。構造・管理・立地、そして長く住むための見極め方——設計の現場から見えている景色を、できるだけ平易な言葉でお届けします。
上質なマンション選びのパートナーとして、このノートがお役に立てば幸いです。