東京のマンションを、長く住む視点で見極めるために。
設計に携わる者の目で、カタログには書かれていない大切なポイントを、
分かりやすくお伝えしていきます。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)がまとめた月例速報によると、2026年7月の首都圏中古マンションの平均成約価格は5,267万円、成約㎡単価は84.17万円だった。前年同月比では成約価格が▲0.7%、成約㎡単価が▲1.5%と、いずれも3か月連続の下落となっている。
取引の量も細っている。成約件数は前年同月比▲8.6%で、4か月連続の減少。一方で、売り手が付ける「売り出し価格」は上昇が続いており、首都圏の登録価格は24か月連続で上がっているという別のデータもある。売り出す側の希望価格は上がり、実際に決まる価格は下がる——この2つの数字が逆方向を向いている状態が、いまの中古市場の実像だ。
希望価格と成約価格の差が開くと、まず起きるのは「売れ残りが増える」ことだ。都心部を中心に在庫が積み上がっているという報告も出ており、値付けが強気なまま動かない住戸と、現実的な価格に直した住戸のあいだで、成約までの期間に差がつき始めている。買う側から見れば、掲載価格をそのまま相場だと思わないほうがいい局面に入った。
掲載されている金額は「売り主の希望」であって、街の値段そのものではありません。気になる部屋があったら、同じ駅・同じ規模で実際に決まった価格を並べて見てください。数字より先に、その街が今どのくらい人に選ばれているかが見えてきます。
住友不動産が埼玉県朝霞市朝志ヶ丘で進める「シティテラス志木」が、2026年9月に販売を開始する。敷地面積は15,607.12㎡、鉄筋コンクリート造地上8階建で、総戸数は全456邸。専有面積は55.24〜80.85㎡、間取りは1LDK+S〜4LDKで、竣工は2027年2月中旬、引き渡しは同年3月下旬を予定する。
立地は東武東上線「志木」駅から徒歩8分。加えて東武東上線「朝霞台」駅とJR武蔵野線「北朝霞」駅がいずれも徒歩12分で、3駅3路線が使える。志木駅は急行・準急が停まり、池袋まで乗り換えなしで結ばれる。都心のタワーが1戸1億円を超える水準に達したいま、実需層の受け皿は郊外の急行停車駅にまで確実に広がっている。
注目したいのは、これがタワーではなく8階建の板状型で456邸をまとめている点だ。1.5haを超える敷地を平面的に使う計画で、住棟のあいだに空地を取りやすい。首都圏の新築供給が年間2万3,000戸台まで縮むと見込まれるなかで、都心の高価格帯とは別に、こうした郊外大規模型がまとまった戸数を供給する構図がはっきりしてきた。
志木・朝霞台・北朝霞が徒歩圏という立地は、通勤先が変わっても住み替えずに済むという意味で強いです。休日の昼に3つの駅まで実際に歩いてみると、この街の生活圏の広さが体感できます。
三井不動産は2026年9月7日、東京都品川区で築50年を超える賃貸住宅を全面再生した「リハイツ長者丸」を完成させたと発表した。もとの建物は1968年竣工の棟と1974年竣工の棟からなり、築58年を数える。再生にあたっては住戸構成を組み直し、42戸を40戸に再編した。最寄りは東京メトロ南北線・都営三田線「白金台」駅で徒歩13分。
採用したのは「リファイニング建築」と呼ばれる手法で、既存建物の約80%を活かしながら性能を更新する。同社によると、建て替えた場合と比べて工事費は約30%削減、CO2排出量は約60%削減できたという。再生後には検査済証も新たに取得し、古い建物にありがちな書類の欠落も解消した。賃料は周辺の新築と同等の水準を実現しているとする。
この事例が示すのは、「古い建物=建て替えるしかない」という前提が崩れつつあることだ。都心では建設コストと工期の長期化が続き、更地にして建て直す事業のハードルは上がる一方にある。既存の建物を活かして中身を入れ替える選択肢が採算に乗るなら、街並みは急に建て替わらず、少しずつ更新されていく——住む側にとっては、慣れ親しんだ景色が残るという意味を持つ。
建物が一斉に建て替わる街は、住人も一斉に入れ替わります。少しずつ中身が更新されていく街のほうが、昔からの店や顔なじみが残りやすい。長く住むつもりなら、その街の建物がどんなペースで変わってきたかを見ておくと参考になります。
「Brillia 世田谷上北沢」は、東京都世田谷区上北沢五丁目に計画された全86戸の低層レジデンスだ。京王線「八幡山」駅から徒歩5分で、新宿駅までは乗り換えなし18分。建物は地上5階建、専有面積は34.77〜85.12㎡、間取りは1LDK〜4LDKと幅が広い。売主は東京建物と京浜急行電鉄の2社で、施工は木内建設が担当する。
特筆すべきは3,800㎡を超える敷地面積だ。86戸をこの広さに5階建でおさめる計画で、住戸あたりの敷地の余裕が大きい。世田谷区内でこの規模の土地がまとまって出てくること自体が近年は珍しく、駅徒歩5分という条件と両立している点で希少性が高い。予定価格は2LDK〜4LDK(平均約69.86㎡)で約9,700万円〜1億8,000万円と案内されている。
八幡山は、京王線で明大前・下高井戸といった乗り換え駅と新宿を短時間で結ぶ位置にありながら、駅を降りると低層の住宅地が広がる。上北沢のあたりは古くからの区画が残り、桜並木で知られる通りもある。将来の資産性という観点でも、環境が急変しにくい低層住宅地は評価が安定しやすい。
八幡山から上北沢にかけては、駅前を離れると一気に静かになる街です。平日の夕方に駅から現地まで歩いてみてください。帰宅する人の流れと、そこに暮らす人の年齢層が、この街の落ち着き方をよく表しています。
「オーベルアーバンツ東武練馬」は、東京都板橋区徳丸三丁目に計画された全33戸のレジデンスだ。東武東上線「東武練馬」駅から徒歩3分。鉄筋コンクリート造地上5階建で、専有面積は約42〜95㎡、間取りは1LDK+S〜4LDK+納戸まで全18タイプを用意する。売主は大成有楽不動産、竣工は2027年8月下旬を予定している。
この計画の特徴は、最上階の5戸に住戸とは別に独立した「ハナレ(納戸)」を設けた点にある。住まいの中ではなく外側にもうひとつ部屋を持つ構成で、趣味の道具や仕事道具の置き場としても、こもれる場所としても使える。33戸に18タイプという細かさも、画一的な間取りを並べない設計思想の表れだ。予定価格は平均約57.29㎡で約5,900万円〜9,700万円とされている。
東武練馬は東武東上線で池袋まで直通、駅前には昔ながらの商店街と大型商業施設の両方がそろう。城北エリアのなかでは生活利便と価格のバランスが取りやすい位置にあり、23区内で徒歩3分・5,000万円台からという選択肢は今となっては貴重だ。33戸という規模は、住民の顔が見える距離感で管理組合が回る現実的なサイズでもある。
東武練馬は、駅前の商店街とイオンの両方が使える珍しい街です。買い物の仕方が世代によってはっきり分かれるので、平日の夕方に両方をのぞいてみると、自分の暮らし方に合うかどうかが早く判断できます。
「イノバス吉祥寺コート」は、東京都武蔵野市に計画された全15戸の小規模レジデンスだ。2026年9月7日に発売が公表された。JR中央線・中央総武線・東京メトロ東西線「三鷹」駅から徒歩17分、JR中央線・中央総武線・京王井の頭線「吉祥寺」駅から徒歩19分という、2つのターミナル駅の中間に位置する。
敷地面積は約386㎡、鉄筋コンクリート造地上6階建で延床面積は約1,047㎡。専有面積は43.14〜62.90㎡、間取りは1LDK+SR〜3LDK。第1期は5戸で、価格は6,998万円〜8,998万円。竣工は2027年9月下旬、引き渡しは同年10月下旬を予定する。売主はオープンハウス・ディベロップメント。
吉祥寺・三鷹という人気エリアで、駅前の相場に対して手が届く価格帯に収まっているのは、駅からの距離を受け入れた結果だ。ただしこの一帯は、井の頭公園を挟んで両駅の商業エリアに向かう住宅地で、自転車を使えば生活圏は一気に広がる。15戸という規模は共用部の負担も軽く、単身から二人暮らしまでを想定した構成に合っている。
吉祥寺も三鷹も歩けるという立地は、実際に両方歩いてみないと価値が判断できません。井の頭公園を抜ける道を通ると、距離の感じ方がかなり変わります。休日の朝に一度、両駅まで往復してみてください。
「プレミスト鷺沼」は、神奈川県川崎市宮前区有馬一丁目に計画された全68戸のレジデンスだ。東急田園都市線「鷺沼」駅から徒歩9分。専有面積は68.56〜90.97㎡、間取りは2LDK+S〜4LDKで、ファミリー層に照準を合わせた構成になっている。売主は大和ハウス工業、管理は大和ライフネクスト。2026年12月の販売開始、2028年9月の入居を予定する。
鷺沼は、いま川崎市北部でもっとも動いている駅のひとつだ。駅前の再開発が進行中で、商業施設と公共施設を組み合わせた新しい拠点が計画されている。田園都市線で渋谷まで急行約20分、二子玉川や溝の口といった商業集積へも短時間で出られる位置にありながら、駅を離れると起伏のある住宅地が広がる。
近年の首都圏では、専有面積が70㎡を割る住戸が当たり前になりつつある。そのなかで68〜90㎡台を中心に据えたこの計画は、都内で同じ広さを求めると価格が跳ね上がる層にとって現実的な選択肢になる。68戸という規模も、共用部を過剰に持たず管理費を抑えやすいサイズだ。販売開始は年末で、それまでに再開発の輪郭がもう少し見えてくる。
鷺沼は駅前が今まさに変わっていく途中なので、完成後の姿を想像しながら見る必要があります。現地から駅までの坂道を実際に歩いて、毎日の上り下りが苦にならないかを確かめておくと安心です。
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はじめまして、ryoと申します。一級建築士として、集合住宅・分譲マンションの設計に携わっています。
図面を描く仕事を通じて学んだのは、「住まいの良し悪しは、カタログやモデルルームの印象だけではわからない」ということ。構造・管理・立地、そして長く住むための見極め方——設計の現場から見えている景色を、できるだけ平易な言葉でお届けします。
上質なマンション選びのパートナーとして、このノートがお役に立てば幸いです。